全くブレない自己信頼感こそが、渋谷ギャルのカリスマたるゆえん/藤井みほな『GALS!』

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 蘭はそもそも劣等感を抱くことがないから、誰のこともいじめない。卑劣なやつには容赦しないけど、自分に逆恨みして攻撃してきた後輩でも謝れば全部チャラ、あっさり許す(第18話)。『GALS!』連載開始の数年前に見たテレビドラマで「一番強い人間っていうのは、一番難しいことができる人間。人のこと許すって難しいよな」という台詞があったのだが(小学校を舞台にした学園ドラマ『みにくいアヒルの子』)、なるほど、人を許せる蘭は、やっぱり一番強い人間だ。そんな蘭が、劣等感に苛まれる他者にかける言葉は「自分サイコー」「とにかく自分を愛せ」と力強い。

「いいか どーせなら男が勝手に貢いでくるくらいのいい女になりな このあたしみたいにな!」
「親の期待にこたえんのに命かけるなんてさ つまんねー人生だな!」
「おめーはそーやって自分の悪口ばっか言ってるん自分が好きなのか!? 自分嫌いなやつが人に好きになってもらおーなんてさー そりゃ虫がよすぎるぜー」
「バカにされんのこわくてギャルやってられっかよ」
「どんな瞬間でもさ あたしは生きてるのが大好きだからに決まってんじゃん」
「まるで操り人形みてーだな お前自身がどこにもいねー そんなんで生きてる手ごたえあったのかよ?」
「心は目に見えねえ だから信じるっきゃないんじゃねーのか? 信じあえなくなったら…もうお手上げじゃん」

 『GALS!』のメイン読者は女子小学生。持ち物も洋服も好きな芸能人も、みんなとうまく合わせる“協調性”が重視される思春期、思い悩む子は多い。保護者からは疎まれそうな藤井みほな作品だけれど、読者に本当に必要な言葉を届けていたんじゃないだろうか。これらの言葉はさらに上の年代、女子中学生にも女子高生はもちろん、大人の女性にも必要だし、男女の別なく、自分の大切さを信じられない人々に届くべきだ。昨今はコギャルブームの頃よりずっと“空気読む”ことが求められる時代だが、だからこそ空気など無視してとことん自分を愛する蘭の生き様は魅力的に映る。あのころ『GALS!』読者だった女子たちも、今は20代。蘭みたいな、いい女になっているだろうか。

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