
Photo by Warrick Bayman from Flickr
育児休業の最長期間を1年半から2年に延長することや、企業と従業員が折半している雇用保険料を3年間引き下げることなどを盛り込んだ雇用保険関連法案が1月31日に閣議決定されました(厚生労働省による概要はこちら)。
失業給付の拡充などが行われた今回の改正で特に重要なのは、原則1歳までの育児休業を6カ月延長しても保育所には入れない場合等に限り、さらに6カ月(2歳まで)の再延長を可能にすること、また育児休業給付の支給期間を延長するという2点でしょう。
同法律の前回の改正では、高齢者の再雇用や介護離職に関する制度改変が主でしたが、今回の改正は育児や出産に関する休業に焦点を当てているといえます。
こうした改正は、労働者が出産、育児、介護で仕事を辞めたり休んだりせざるを得ない状況でも生活を保障するために必要なものです。
一方で、雇用保険のあり方を変えるだけでは、出産、育児、介護などの家族のケアそのものがやりやすくなるわけではありません。OECD諸国の中でも極端に長い労働時間の短縮はもちろんのこと、在宅ワークやフレックスタイム制度のより広範な適用など、労働者が個々の状況に合わせて働き方を変えられるような社会に変えて行かなければ、これらの問題が解決しないことは再三指摘されてきました。
こうした社会的ニーズに押されて、政府は「一億総活躍」を推し進めるとともに、今年度は「働き方改革」を実施することを念頭に置いているようです。1月30日に法案が提出された残業時間上限法案も働き改革の看板を背負った法案です。
現在、労働基準法が定める法定労働時間は、1日8時間、週40時間です。しかし実際には、労基法36条に基づいた、いわゆる「36協定」と特別条項によって、事実上24時間働かせられる仕組みになっているのが現状です。この、事実上の青天井である長時間労働を制限し、残業時間の上限を年間720時間、月平均60時間とするのが今回の法案の核です。
しかし、この法案には問題があります。というのも繁忙期には月最大100時間かつ2カ月連続月平均80時間までの残業は認めることになっているのです。月100時間労働は過労死ラインです。この点を看過することは出来ません。
そもそも、本来ならば現状の法律でも過剰な長時間残業はある程度防止できるはずです。それでも長時間労働が横行しているのは、様々な抜け道や「残業はするものだ」といった社会通念が存在しているためです。
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