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「撮れ高」を異様に気にすると、発砲も気にならず、カタツムリも生で食べられる? 冒険番組『地球一周するなんて(笑)』に漂っていた異様な空気

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問題のディレクターが、手のひらほどもある巨大カタツムリ「クンクン」を、通訳が「絶対に生で食べてはいけない」と再三忠告するにも関わらず生で食べてしまったのだ。一口かじっただけで、口から大量の粘液が漏れ出し、ディレクターは美容にいいというその粘液を顔じゅうに塗りたくり、その粘液のせいで、目は真っ赤になってしまった(「※知識なく生で食べるのは危険です」というテロップは出ていた)。

その後もディレクターの問題行動は続く。無事コス村にたどり着き、部族の生活に密着することに成功したクルー。植物から出る毒を川に流し、魚が死んで浮いたところを採るという彼らの特殊な漁を撮影した後、またも通訳が「生で食べてはダメ」と再三忠告するにも関わらず、件のディレクターはやはり魚を生で食べてしまったのだ(ここでも「※知識なく生で食べるのは危険です」というテロップは流れる)。異常行動としか言いようがない。

現地の人々に危険と忠告され、アワフン族に発砲されてもロケを中止することなく、さらには通訳が繰り返し止めるにもかかわらず、生でカタツムリや魚を食べてしまうディレクターから筆者は「狂気」すら感じてしまった。

ディレクターはクルーに対して過酷な旅を強要しているわけではなかった。むしろ、率先して危険なことに手を出し、何があってもフワフワしていて威圧感などもない。一方、クルーたちの間に不思議な空気ができあがっているのを感じた。例えば、U字工事の福田が「(食料が)足りねーな」とつぶやき、相方の益子が「そういうもんじゃない、ありがとうだ」と福田を強く叱ったとき(福田は、苦笑いをするしかなさそうだった)。あるいは、足を怪我してクルーを離脱したディレクターが最後まで、迷惑をかけてはいけないと、一人地面に倒れこんでも「一人でも大丈夫だから、先に行ってくれ」と懇願していたとき(彼は担架で安全なところまで戻された)。彼らの姿を見て、極限状態では、集団の空気に飲み込まれて集団の理念に忠誠心を近い文句を言わなくなる人と、その空気に飲み込まれない人とが出てくるものなのだと思わされた。

集団を、ある種の狂気へと向かわせるのは、案外職務に対する生真面目な忠誠心と、それを遂行するためのポジティブさなのかもしれない。そう思うと、ディレクターが何度も気にかけていた「撮れ高が足りない」という言葉が、急に怖くなってしまった。あのディレクターを突き動かしてきたものはいったいなんだったのだろうか。
(韮澤優)

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