生殖器の解剖図ばかり見せても意味がない。感染症医が語る「日本の性教育に決定的に足りないもの」

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 性教育の問題というと、とかく「コレを教えて、アレは教えない」という議論になりがちだが、子どもたちに“葛藤”を起こさせないこと自体が問題だと岩田医師はつづける。

「学校教育の現場では、文部科学省の学習指導要領に基づいて授業が行われています。マニュアルをもらってマニュアルどおり教えているのですから、教師の側にまず葛藤がない。性は多様ですから教え方がひとつでは無理があるんです。性的なアクティビティが高くて10代の妊娠、出産が多い学校と、アクティビティが低い学校とを、同じ指導要領で教えるのは最初から無理があります」

 それは性教育だけに限った話ではないと岩田医師はいう。

「個々の学校、ひとりひとりの教師ごとに『自分たちが目の前の生徒に何を教えるべきなのか』『どうしてそれを教えなければならないのか』を葛藤する必要があります。教える側にそれがなく、ただ答えを押し付けるだけでは、子どもたちの考える力も主体性も育つはずがありませんからね」

 正解はひとつではないとはいえ、葛藤なき性、主体性なき性が幸せな性からほど遠いものになることは間違いないだろう。最後に、岩田医師は次のように締めくくった。

「近年、夫婦間の性がうまくいっていないという話を非常によく耳にします。セックスレスについては、メディアでもよく採り上げられていますね。セックスは相手あってのこと。パートナーを徹底的に尊重する、パートナーがいやがることは絶対にしない……夫婦間でもこうした基本的なことがクリアされていないために起きている問題は多いのではないでしょうか。大人にも、性教育が必要ですね」

 大人も性について考え、葛藤することを忘れてはならない。

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