『バッド・フェミニスト』に続け!まだまだこんなにある未邦訳フェミニズム本

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アマーナ・フォンタネッラ=カーン、『ピンク・サリー革命―インドの女と力の物語』(Amana Fontanella-Khan, Pink Sari Revolution: A Tale of Women and Power in India, W. W. Norton, 2013)

『Pink Sari Revolution』(Hanser Berlin)

『Pink Sari Revolution』(Hanser Berlin)

 最後にご紹介するのはインドの草の根フェミニズム運動のルポです。インドのウッタル・プラデーシュ州南西部にあるブンデールカンド地域の田舎の村で、ピンクのサリーを着て杖を持った不屈の女たちの集団、通称「ピンク・ギャング」が活動しています(参考までに、こちらのタンブラーの写真もご覧下さい)。彼女たちは日々、ブンデールカンドに蔓延する腐敗と犯罪と女性に対する暴力に対抗するため、示威行動や政治交渉を行っています。

 ギャング(といっても暴力や犯罪は行わないのですが)を率いるのはサンパット・パルです。サンパットは12歳で結婚しましたが、夫の言うことを聞いて大人しくしているのは性に合わず、裁縫の仕事でお金を稼いだり、政治活動をしたりしていました。2005年にピンクのサリーをユニフォームにした団体を結成し、翌年、不当逮捕された男性の妻からの訴えにより、ギャングの皆で警察を取り囲んで抗議行動を行いました。サンパットと仲間たちはいろいろな嫌がらせや差別にあいつつ、女性の権利と正義を守る活動を続け、どんどんメンバーを増やします。活動には親の反対で結婚できない恋人たちの結婚支援なども含まれます。

 このルポは監禁され、強姦されたあげくに盗みの疑いをかけられた若い女性、シールーに対する支援活動を主な軸とし、サンパットや他のメンバーの人生模様、組織の成り立ちなどを織り込んだものです。いろいろ盛り込んでいるので時系列がごちゃごちゃしているところはありますし、また性暴力や警察の腐敗など暗い話題もたくさん入っていますが、女性たちの力強い活動はもちろん、メンバーの私生活や性格などがお昼のメロドラマかと思うような濃さで描かれており、退屈しません。サンパットが村八分にされる話などはいかにもインドの土地柄を感じさせるところがあると思う一方、日本の地方にも見受けられる陰湿で閉じた人間関係に通じるところもあって、少なくとも田舎育ちの人間にとっては国境を越えて身近に思える話もけっこう出てきます。

 この本が出た後、リーダーのサンパットがリアリティショーに出演し、組織の内紛でリーダーを降りるなどということが起こったそうで、残念なことにギャングの活動は以前に比べるとあまり盛んではなくなっているそうです。とはいえ、最盛期の活発な活動には見習いたいと思うところがたくさんあります。全体的に強烈なキャラクターが出てくるルポで、インドでは映画化もされているそうですが、日本ならむしろマンガ化したらいいかもしれません。なんでも2月14日は「ピンク・ギャングの日」(p. 139)だそうですが、皆さんも今年はヴァレンタインデーではなくピンク・ギャングの日を祝われてはいかがでしょうか。

ピンク推しの真相は謎

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 今回の記事では英語圏では話題になった一方、日本では情報が少ないかもしれないと思われる本3冊をとりあげましたが、他にもフェミニズム関係の有名な本で日本語訳がないものはたくさんあります。本当は『バッド・フェミニスト』でも引用されていて、英国で大ヒットしたキャトリン・モランの『女になる方法』(Caitlin Moran, How to Be a Woman, Ebury Press、2011)も取り上げたかったのですが、こちらについては既に私が『いま、世界で読まれている105冊』(テン・ブックス、2013)で詳しい紹介を書いているので割愛しました。私の個人ブログで書評したことのある本や、既に前著が翻訳されているレベッカ・ソルニットのように比較的日本での知名度があると思われる作家の本、未邦訳のフェミニズムの古典などもとりあげていません。英語圏だけでも面白いフェミニズムの本はたくさんありますので、どんどん翻訳されてほしいものです。

 この記事を書いてひとつ気になったのが、表紙にピンクを使っている本がやたら多かったということです。『ピンク・サリー革命』や、『バッド・フェミニスト』のように著者がピンクの話をしている本の表紙がピンクっぽいのはわかりますが、言語を問わず、フェミニズム本の表紙がピンク推しなのにはちょっと驚きました。いわゆる「ダサピンク現象」ではなく、ふざけた色とか不まじめな色とみなされがちなピンクを逆手に取ってステレオタイプを打ち破るというコンセプトの現れなのかな……とも思いますが、真相は謎です。

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