「男性保育士問題」と「保育士待遇問題」は深く絡み合っている。高い専門性を必要とされるために生まれる困難

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Photo by Heather from Flickr

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年が明けてから保育士に関する話題がいくつかありました。

まず2月8日に、政府が全保育士を対象に処遇改善を行うという案が公表されました。詳しい内容は駒崎弘樹さんがまとめられているのでそちらをご覧ください(【速報】本日公表の「保育士の給料改善」案を解説します)。

駒崎さんも解説されているように、今回のような給与改善が必要な理由は、中堅になる手前くらいでどんどん辞めていってしまう保育士が多い状況を変えるためです。保育士不足の理由には、保育士の給与が低く、仕事がきついという問題があります。離職を防ぎ、保育士としてキャリアを積む人を増やすために、保育士全員の給与アップはもちろん、キャリアの長い人、管理職などにはさらに上乗せすることによって、少なくとも女性の平均賃金レベルには到達することが期待されます。

そしてもう一つのニュースは、1月に千葉市長の熊谷俊人氏がツイートした「男性保育士にも女児の着替えや排泄の介助をさせるべきだ」という内容を巡る論争です。このツイートには、特に性加害を不安視する方々から多くの反論が寄せられました。熊谷氏はこれらの反論に対してツイートだけでなく、自身のFacebook上で丁寧な意見を述べています。

この連載でも何度か保育園や保育士に関する話題に触れてきました。今回は保育士という仕事とジェンダーの問題について考えてみたいと思います。

高度がゆえに、割り切れない保育士の性別

保育士の給与が低いのも、保育士が女性ばかりなのも、保育士が女性の仕事とみなされているからだというのは以前にもお話ししたことがあります。これは、保育という仕事が、子育て、ケア、母性などと結びつけられやすいためです。保育は女性がすべきものであるという思考は、子育ては出産・授乳ができ、「母性本能」を持っている女性の方が得意、女性の仕事であるという社会通念、固定観念によるものが大きいといえます。

実際、保母という名称が保育士へと名称変更された1990年代後半から30年近くも経つのに、現在でも保育士の95%は女性です。保育士の世界に男性はまだまだ参入できていないというのが現状です。

熊谷氏のツイートをきっかけに見られた様々な意見の中には「保育士は専門職であり、性別は関係ない」というものがありました。これは男性保育士による性加害のリスクを懸念する人々に対する反論だけでなく、「保育士は女性の仕事である。女性にしかできない仕事である」という通説に対する反論とみることもできるでしょう。保育士という仕事が専門職であるという前提に立つならば、熊谷氏が述べたように、「女児の着替えを男性保育士にはさせたくないというのは差別だ」というのは、極めて真っ当な意見です。

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