連載

イクメンとかいう言葉そのものが、妻にとっては邪魔でしかない

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また、とある日の辻希美のブログには、夫の杉浦太陽についてこんなことが書かれていた。

『noa(娘)を連れて朝一で病院へ。診察開始時間前から並び、一番で受診することができた。そのあと学校に送り届け帰宅したら、たぁくん(夫)が息子達にご飯食べさせてくれていて……(涙)
本当に助かったぁぁ♡♡ありがとう(涙)(涙)我が家のイクメン♡♡♡』

別に普通じゃね? と思ってしまうのは私だけだろうか。

夫は子の父親なのであって、つまり子の世話する立場である。監督責任者である。
だから、子が腹を空かせていたら食事の支度をして食べさせるのは当然やるべき仕事だ。夫婦が互いに感謝の気持ちを持つのはいいが、特別賞賛されるようなことではない。

共働きの妻が朝から長女のために走り回っているのに、在宅している夫がお腹空かせてる息子を放ってぐうたらしてたらどうなのよ。もし私なら帰るや否や、「寝てんじゃねぇ」と小一時間説教してしまうだろう。その前に子供に飯か。

でも私のような行動をとる妻は、マスメディア的には「鬼嫁」と呼ばれる。
「怖い奥さんだ」とか「夫が尻に敷かれてる」とか、そういうことになるのだ。
まさに【夫は半分のことを請け負うと“イクメン”だと称賛される】が【妻は半分のことを要求すると“鬼嫁”と蔑まされる】という、女にとっては地獄のようなルールが、この社会に根を張っている。

先ほど紹介したブログ記事は、辻が何かを深く考えて投稿したものではないと思う。単に日常生活を日々記録して公開するのが彼女のルーティンになっているのだろうし、夫への感謝の気持ちを綴るのも悪いことじゃない。でも、これを読んだ辻ブログ読者の大半は「夫がここまでするのはすごいことなのだ。杉浦は、して“くれた”のだ」と認識してしまうのではないだろうか?

さらにブログ記事やインスタ投稿がいちいち「太陽のイクメンぶりに辻ちゃん感謝、『羨ましい~』『素的な旦那様★』ファン賞賛」といった具合のくっだらないネットニュース化され、ポータルサイトやLINEニュースに配信され、辻ブログの読者以外にも拡散される。
こうしたことの積み重ねで、地獄ルールは強化されていく。

有名人の発言には多大なる影響力があり、これでは世の中の妻たちにとって、少なくとも私のような妻にとっては、大変迷惑な話だ。

育児の責任は「パパ1:ママ9」?

結局、この「イクメン」という言葉が当たり前のように使われ、そんな「イクメン」男性をもてはやせばもてはやすほど、「育児とは本来女がやるのが当然である」ということを裏付けてしまっている。

共働き世帯が増えた現在では、この言葉は妻にとって邪魔な存在でしかないのではないだろうか。

先の辻ブログへの反応のように、あるいは水嶋ヒロのインスタコメントにも顕著だが、こうした「イクメン」を、「こんなにやって“くれて”羨ましい!」「うちも見習ってほしい!」と素直にホメる女性たちも少なくはない。

まるで年に1度海外旅行に連れてって“くれる”とか、寝る前にマッサージして“くれる”とか、そういったオプション事項と同類でくくっている。

私も今まで、既婚子持ちの知人女性たちから、そうした言葉を何度も聞いてきた。

「〇〇ちゃんの家は旦那が進んでオムツ替えてくれるし、ミルクも作ってくれる。羨ましい!」
「夜泣きがひどくて睡眠不足な時は、××ちゃんの旦那は当面食事は手抜きしても理解してくれるらしい!」

どの台詞にも、して“くれる”という言葉が共通して付いているのだ。
まるで、妻の個人的な趣味によって旦那に迷惑をかけている→でも旦那は寛容に受け止めて“くれて”優しい男性なのだ、とでもいうかのような言い方だ。

また、

「△△ちゃん家は、夜中赤ちゃん泣いちゃっても旦那さん大丈夫らしいよ」
「へぇ~それは羨ましい! ウチは起きちゃうわぁ」

というやり取りも聞いたことがある。

要は、『朝から仕事の夫が、夜中に起きてしまうのは悪い。何とか起こさずに済ませたい』という妻の配慮なのだろう。
へぇ~それはたいそうな思いやり……と思いたいところだが、どう考えてもバランスというか視点というか、すべてがおかしくないだろうか。
二人で望んで授かった命ではないのか? 夫の精子がなければ子供は存在していないのに、まるで妻が好き好んで勝手に産んで、個人的な趣味で子育てしてるとでもいうのか?
妻も朝から仕事だったり、あるいは一日中、切れ目なく赤ちゃんの世話をする密着育児の真っ最中だったりするだろうに、『外で仕事をする夫』は夜泣き対応をさせては“申し訳ない”存在なのだ。

またしても木下優樹菜の夫、藤本敏史の例を出させてもらう。

木下は第一子出産後メンタルが不安定になったと自著で明かしているのだが、木下が子供の夜泣きで3日以上不眠不休で倒れたとき、夫の藤本は夜中リビングで子供を抱っこしてあやしていた……という。

このエピソードは、藤本のイクメンぶりを称えるものらしく、彼を「えらい、よくやった」と評価する主旨の記事(記事と呼んでいいものか不明だが)に引用されたりしているが、そんな様子を見るにつけ、私は「この国は大丈夫だろうか?」と心から案じてしまう。

そもそも、母親が3日も不眠不休で倒れる状況って何なのだろう。
そうなってみてから、夜中抱っこしてあやしてるからといって何だというのだろう。

そりゃ藤本は一応芸能人だし、もしかしたら地方ロケや深夜までの仕事が続いて休む間もなかった可能性だってあるが、このエピソードを美談と称える記事はあくまでも「献身的な夫が妻をサポートしている!」とでも言いたげで、きっと藤本が週3しか仕事がなかったとしても同じ内容だっただろうと思う。

子供に対する責任は夫と妻それぞれ同量あるはずなのに、世間の認識ではパパ1:ママ9くらいの極端さだ。これは穏やかではない。

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