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90年代生まれナチュラル女子の感性を育んだ『グッドモーニング・コール』のほどよくオシャレな理想郷/高須賀由枝

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一緒に住んでもエロはなし

トンデモ設定ではあるものの、物語自体はかなりゆるい。菜緒と上原はお互いの優しさに触れて次第に恋心を抱くようになるが、2人とも相当マイペースだしボケた性格で一向に進展しないのだ。微笑ましくはあるのだが、2人の周囲にいるサブキャラたちもとっととくっつきゃいいのにとやきもき。

学校のみんなに一緒に暮らしていることがバレるとまずい、でも完全に他人のふりっていうのも無理があるから、学校では付き合っているふりをすることにした菜緒と上原(提案したのは上原)。そんなに無理があるか、他人のふり? けれど読んでいる限り、2人暮らしの初期からお互い相手に気があるように見える……。先に自分の恋愛感情に気付いたのは菜緒で、学校で付き合っているふりをしているのをいいことに、自分の気持ちをアピールするように(ラブラブ作戦)。それはもう、めっちゃわかりやす過ぎるアピールだったが、鈍すぎの上原は全然気づかない。学力だけでなく鈍感力も高い上原だが、それでも徐々に自分の恋愛感情を自覚し、2人は両想いに。同じ高校に進学した2人は、些細な喧嘩やすれ違いを幾度も繰り返しながら仲を深め、相思相愛の同棲生活を継続するのだった。って、菜緒の親が滅多に上京してこないのが不思議でしょーがない! 放任主義なんだろうか。

ちなみに2016年、フジテレビオンデマンドにて『グッドモーニング・コール』の実写ドラマが放送されたが、2人だけで暮らすことになる菜緒(福原遥)と上原(白石隼也)は高校2年生という設定に変更されている。やっぱりさすがに、中学生ってわけにはいけなかったということか……。

およそ4年半という長期に渡る連載にもかかわらず、物語の時系列は中3夏休み~高1秋まで(つまり1年数か月)と、かなりスローペース。相手に対する気持ちが揺らいだり、別れの危機に直面するような大事にも至らず、それより痴話喧嘩やくだらない嘘による騒動など、日常の恋愛風景をじっくりゆったり描いている。物語初期はともかく中盤以降、読者に刺激を与えるというより、ほっこり♡ゆるライフを提供する作品だった。登場人物は、上原に恋する女子や菜緒に恋する男子など次々に増え続け、誰が誰だか顔だけで判別できないほど増えたが、根っからイヤな奴というキャラは出てこない。

上原と菜緒は男女交際をはじめても直接的な性描写はなく、あってもキスどまり(絶対に舌を絡めるようなことはしていない)。唯一、ハプニングにより温泉旅館にふたりきりで宿泊するという定番の心拍数上昇展開を迎えたとき、テレビをつけたら有料チャンネルが流れて気まずくなり、上原が「このまま同じ部屋で寝て 朝まで何もしないってのは たぶん無理だから俺は」と言ったところが全巻で最大のドキドキポイントだろうか。毎日ひとつ屋根の下で寝食を共にしているのに、旅館という非日常の場所で布団を並べて敷かれるとそういう雰囲気になるものなんですね。菜緒も「やっ やじゃない…です」と受け入れ態勢を示したが、これまた定番の<湯あたりで倒れる>をやらかし性交渉はなし。性交渉しましたよ、と会話や絵で示したりぼん漫画は『ご近所物語』や槙ようこ『愛してるぜベイベ★★』くらいしか私は知らない。最近はもっと増えているのだろうか、あるいは変わらずなのか。

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