苛烈なトランプ批判に沸いた第89回アカデミー賞授賞式 ハリウッドが示した多様性のあり方と政治的メッセージ

文=堂本かおる
【この記事のキーワード】

アンチ・トランプ・ジョーク

今年のアカデミー賞はアンチ・トランプ・コメントで溢れた。ハリウッドは全般的にリベラルであり、その上司会者がコメディアンでトーク番組ホストのジミー・キンメルだったことから当然の成り行きである。アメリカには深夜枠のトーク番組がいくつもあり、ホストは時事ネタをジョークにして視聴者を笑わせる。今はトランプ・ネタが必須であり、毎夜、多くの番組で最新のトランプ・ジョークが繰り出されている。

キンメルは今年も最優秀主演女優賞にノミネートされ、会場にいたメリル・ストリープの代表作の名をいくつも挙げ、「50本以上の映画に出演し、アカデミー賞に20回もノミネートされた、過大評価され、凡庸な女優です」と述べた。当然、これはトランプへの皮肉を込めたジョーク混じりの賛辞だ。ストリープは強烈なアンチ・トランプであり、過去にトランプの仮装をしたり、異議を唱えるコメントを発している。それに対してトランプは大統領という立場にありながら、ストリープを「過大評価されている俳優だ」と侮辱するツイートを行っていた。なおキンメルは「すてきなドレスですね。イヴァンカのブランド?」と、さらなるジョークを付け加えることも忘れなかった。

トランプ政権への不安と、それに対する真摯な挑戦を語る受賞者もいた。『ムーンライト』で最優秀脚色賞を受賞した同作の監督バリー・ジェンキンスは以下の受賞スピーチを行った。

「映画に自分が反映された作品がないと感じる全ての人々へ。アカデミーが付いています。ACLUが付いています。私たちが付いています。そして今後の4年間、我々はあなたのことを忘れません」

ACLU(The American Civil Liberties Union)とは、トランプ政権の政策は憲法や法に反しているとして活動を続けている人権団体である。4年間とは言うまでもなくトランプの大統領として任期であり、黒人もゲイもトランプ政権による圧迫を非常に恐れている。

今回のアカデミー賞では、白人と黒人の結婚が禁じられていた時代を描いた『Loving』(日本公開2017年3月予定)で最優秀主演女優賞にノミネートされたルース・ネッガ、ラティーノと黒人キャストが米国建国の父を演じたブロードウェイの大ヒット・ミュージカル『ハミルトン』と『モアナと伝説の海』のリン・マニュエル・ミランダ、そして先日、ヴォーグ誌の“ゲイシャ・ルック”で物議を醸したスーパーモデルのカーリー・クロスなどがドレスやタキシードに”ACLU”と書かれたブルーのリボンを付けて会場に表れた。トランプの名を挙げないままトランプへのアンチを示す、まさに政治的なリボンなのであった。
(堂本かおる)

※追記:3月3日、読者からの指摘をうけ一部表記を修正いたしました。

■記事のご意見・ご感想はこちらまでお寄せください。

1 2 3

「苛烈なトランプ批判に沸いた第89回アカデミー賞授賞式 ハリウッドが示した多様性のあり方と政治的メッセージ」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。