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「発達障害は親のせい」はデマ。発達障害の診断は、これからを考えるためのステップ 児童精神科医・姜昌勲さんインタビュー

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モデルの栗原類が発達障害であることを公表するなど、「発達障害」という言葉は世間にも浸透してきた。だが「発達障害」とは何かを問われても返答に困るのが実際のところだろう。最低限知っておくべき知識とはなにか。

「疾患としては大きく分けて2つあります。ADHDと自閉スペクトラム症です。

ADHDは、多動性と衝動性、そして不注意症状の3つが主な特徴です。多動性は文字通り、落ち着きがないこと。誤解されがちなのが衝動性で、これは暴力的という意味ではなく、『待てない』という意味です。順番を待てない、相手が話終わるのを待てない、ということです。不注意症状には、ミスが多かったり、いろんな情報から何が自分にとって大事なのか選択できないという特徴があります。だから片づけができなかったりするわけですね。あとはボーっとしてるとか、人の話が聞けないというのもあります。

自閉スペクトラム症は、社会的なコミュニケーションに問題があったり、興味範囲が狭いことが特徴です。自分のこだわりをやっていると安心するので、そこに集中してしまって、他者からなかなか理解されないんです。

学習障害などその他の発達障害もありますし、それぞれ合併していることもあるので、厳密ではありませんが、まずはADHDと自閉スペクトラム症の2つを抑えておくべきだと思います」

前述の通り、発達障害の原因を親のしつけとする人々は、あわせて発達障害が増えているとも主張する。実際に発達障害が増えているのだろうか。

「3つ要因があると思います。ひとつ目は、発達障害という言葉が認知されるようになって、昔は見落とされていたものが診断されるようになったというもの。

ふたつ目がソーシャルサポートスキルの弱化ですね。社会で子どもたちを支える力が弱まり、親も子どももストレスフルになっていることが考えられます。多動で落ち着きがなくても、騒がしくなかったり、周囲がそれを『まあええんや』と受け入れていれば問題はないですよね。でも周りの大人が眉をひそめたり、『親のしつけはどうなっているんだ』って言い出したら、問題視されるわけじゃないですか。そうやって診察にくる親が増えて、実際に発達障害と診断されることが増える、と。

みっつ目は実際に増えている。この3つの要因があると思います。ただどの要因が一番大きいのかはわかりません。いくつかの仮説はありますが、あくまで仮説にすぎません。あと考えられるのは過剰診断ですね。ようは子どもの不適応を何でもかんでも発達障害のせいにしているところもあると思います」

落ち着きがない、コミュニケーションが円滑に取れない人などを、「あいつはアスペだ」「発達障害なんじゃないか」という人々がいる(「アスペルガー症候群」は、2013年に改訂されたアメリカ精神医学会が作成する診断マニュアル「DSM-5」で無くなった)。その際の「発達障害」という言葉は診断名ではなく、ネガティブなもの、スティグマとして用いられているものだ。そこには発達障害への差別意識が透けてみえる。一方、落ち着きのない我が子をみて「この子は発達障害なのではないか」と思う親もいるだろう。

「子どもなんて1歳、2歳はみんな落ち着きがないものです。はいはいが出来るようになって、行動範囲が増えれば落ち着きがなくなるので。だからすぐさま『発達障害なんじゃないか』と不安にならなくていいと思います。なんでもかんでも発達障害扱いして、医療に送りこむというのは学校のみならず職場でも見られるんですよね」

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