頑張りきれない場所もある――暴力にさらされる沖縄の女性たち『裸足で逃げる』著者・上間陽子さんインタビュー

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“助けて”が言える環境を

上間さんは女性たちの人生について書いた文章を、彼女たちの目の前で朗読をして聞かせてきた。

「彼女たちが読めるものにしたいと思っていました。でも、そのまま渡すと『眠い』って読んでくれないんで(笑)。だから目の前で読み上げています。『間違えているところや、自分の人生って感じがしなかったら途中で止めて』って言ってます。沖縄の風俗で働く女の子の話は消費されるように書かれがちです。性的なディティールを書いて、関心をあおって、それはなんの支援にもなっていない。彼女たちはそれを読んで元気になるのか。本人たちが読めて、読んで納得できるものを書きたいんです」

彼女たちを記述するとき、「貧困」という言葉は使わなかった。

「たぶん、当事者にとって『貧困』の言葉はたまらなく嫌なんだろうな。もっと大変なひとがいるって話して、だから自分は貧困ではないというんです。そういうふうにして自分を保とうとしているんだと思います」

しかし、暴力の底には貧困があるのは明らかだ。「貧困状態に陥ると、プライドを失ってしまう。自尊心が揺らいでしまう。脆弱な生活の土台があって、今の暴力があるのではないか」そう思っても、彼女たちの人生を記述する際、「貧困」という言葉を上間さんは使わない。

最後に、上間さんに質問をした。「もし自分が暴力にあったり、友人が暴力にあってしまったらどうすればいいんでしょうか?」

「話せる大人を必ず見つけてほしいです。暴力を受けるのって恥ずかしい体験として感知されるんです。殴っているほうが悪くても、殴られているとみじめな気持ちになって、話すハードルが高くなる。でも、絶対にわかってくれるひとはいる。そして支援者は、たとえそのひとが一回でかわらなくても、それにがっかりすることはありません。助けてといって助けられた体験を持つ子は、その後も助けてと言えるようになっていることが多い。小さいころから自分でどうにかしてきた子たちが、“助けて”って言える環境をつくることは、次の暴力をとめる防波堤をつくることになります」

上間さんは言葉にならない「助けて」を懸命に聞き続けてきた。もし、上間さんが聞かなかったら、書かなかったら、なかったことにされていた声だろう。声をあげられない女性たちは、沖縄だけにいるわけではない。私たちが聞こえないふりをしてきた。学生時代のクラスメイト達の、私たち自身の、私たちの子どもの声が『裸足で逃げる』から聞こえてくる。
(聞き手・構成/山本ぽてと

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