女子校はジェンダーステレオタイプの解消を推進できるか?

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女子学生が抱くジェンダーステレオタイプと女子校

結論の一つを先に述べると、男女別学に比べて男女共学の状況では、女性に対するジェンダーステレオタイプが強化され、女子が自由に学術的好奇心を探究することが阻害される、という現象が発生する場合があるからです。

読者の皆さんにも経験があるかもしれませんが、思春期は自己概念や自尊心に敏感になる時期で、社会的につくられた「男はこうするもの、女はこうするもの」という性別役割(ジェンダーステレオタイプ)を自己概念として規定してしまうことがあると同時に、それから逸脱することを不適切だと捉えがちになってしまいます。このジェンダーステレオタイプの一つに「男子は理系、女子は文系」が存在しているため、ここから逸脱する進学行動を不適切だと考える女子が出てきてしまいます(これは文系に進学したい男子にも当てはまります。正直に言うと私自身も高校時代に文系を選択した際や、大学院で国際教育協力を専攻することを決めた際に、若干の心理的な抵抗がありました)。

このため、金銭的なメリットを考慮しても、ジェンダーステレオタイプから逸脱する科目選択を不適切だと考える度合い(デメリット)が上回ってしまい、女子が文系科目を選びがちになってしまうと言われています。

第4回で紹介した「開発のための対話(C4D)」は、こういった慣習の壁・ジェンダーステレオタイプを取り壊すことで、心理的なデメリットを減らすという効果が期待されるものでした。同様の効果が女子校にも期待できます。男女別学の状況下では異性の存在が希薄なため、例えば「男子は理系、女子は文系」という相対的なジェンダーステレオタイプを自己概念として規定することが難しくなり、自由に学術的好奇心を探究できるようになると考えられています。

女子校と教員が持つジェンダーステレオタイプ

言うまでもないかもしれませんが、教育において教員が果たす役割はとても大きなものがあります。子供の学力を上げることに関して優秀な教員とそうでない教員が30人クラスを担当した場合、学力向上や進学率の改善などによる金銭的な価値は一クラス辺り約6600万円(60万ドル)にものぼると言われるほどです。

生徒だけでなく、教員の中にもジェンダーステレオタイプから自由になれていない人がいます。例えば、女子生徒に対する進路指導に際して、女の子は手に職をつけるべきだ・地元に残るべきだ、というバイアスを持ってしまっている教員は確かにいます。このようなジェンダーバイアスを教室内に持ち込んでしまい、理数系科目において男子を過大評価・女子を過小評価してしまう教員も存在します。また、これは教室内での男女の生徒の振舞いの違いが引き起こしている面もありますが、教室内でより男子に注目をしがちな教員も存在します。

女子教員の割合を増やすことでこの問題に取り組むこともできますが、女子校にも同様の効果を期待できるでしょう。女子校の教室内では過大評価の対象となる男子がいないため、女子の学力を相対的に過小評価できなくなることなどが考えられるためです。

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