女子校はジェンダーステレオタイプの解消を推進できるか?

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女子校が持つ効果は普遍的と言えるか?

しかし、女子校が万能というわけではありません。

「別学か共学か」を分析した研究結果を概観すると、女子校が効果を持つというものと、効果を持たないというものが入り混じっています。理由の一つとして効果の計測の難しさも挙げられますが(平均的に別学の方が共学よりも富裕層・優秀な層が集まっている/優秀な教員が集まってきている、といった現象が反映されたに過ぎない、といったもの)、効果が文脈によるところが大きいという点も挙げられます。

別学が推進される理由の一つとして「男女で学習パターンが違うのだから、別学であればその違いに合わせた教育が出来るので効果が上がる」というものがしばしば言及されます。もしこれが主要因なのであれば、確かに女子校の効果は普遍的なものとなったのでしょうが、近年は「男女で学習パターンが違う」という前提がそもそも誤りなのではないかと言われるようにもなってきています。

このため、女子校の効果として期待できるものは、今回お話したジェンダーステレオタイプが主なものだと考えられるのですが、家庭や地域や世代によっても大きな差があるだけでなく、子供の成長度合い(年齢)によっても、ジェンダーステレオタイプに受ける影響の大きさが異なるため、女子校を推進したからと言って必ずしも日本の女子教育の問題が解消に向かうとは限らないと言えるでしょう。

さらに、共学でもみられる男子のグループと女子のグループで交流が頻繁でない傾向は、別学ではより拍車がかかるでしょう。すると、別学の卒業生は共学の卒業生と比べて、教育段階を終えてから結婚生活を上手くマネージできないなどの弊害があることも指摘されています。

これらの理由から、女子校に進学するか共学に進学するか悩んだときには、ジェンダーステレオタイプについて考えてみるとよいかもしれません。もし自分(ないしは子供)がジェンダーステレオタイプが強い環境下で育ち、かつその影響を強く受けていると感じるのであれば、女子校に進学することで新たな道が開ける可能性があります。

しかし、私が生まれ育ったような田舎の地域では、ジェンダーステレオタイプが強烈(例えば、お葬式や法事では台所に男性が立つことはほぼありません)であるものの、通える範囲に学校が一校しかないので、そもそも共学か別学かを選択する余地すらありませんでした。そのような地域に共学か別学かの選択肢を与えることが出来れば、女子校が持つ女子教育を推進する力が発揮されるのかもしれません。

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