小栗旬の「労働組合」は、業界を変えることができるのか

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階層の分断が明確な欧米では、労働組合の役割というのは「正社員」にこだわるのではなく、あくまでも「労働者階級」のための階級闘争的側面の強い、社会運動です。しかし、一企業内の「正社員」を基準にした日本の「企業組織」は、階級闘争としての社会運動としては弱く、「正社員」の枠組みの外でさらに苦しんでいる労働者を救うような社会運動としても弱いのです。

翻って、小栗旬氏の「俳優労働組合」について考えてみましょう。アメリカの「SAG-AFTRA」という組織は俳優、アナウンサー、脚本家、演出家など、エンターテイメント業界のあらゆる職種の人が加盟しています。

アメリカの俳優というのは、自分でエージェントを探し、自分で仕事を見つける完全なる「自営業」です。しかし、日本の俳優の場合、事務所に所属し、事務所が仕事を見つけ、事務所から給料をもらうという「正社員」と同様の形式になっています。もちろん、雇用契約自体は事務所と「自営主」という関係かもしれませんが、「自営業」といえるほどの自由度はありません。

SAG-AFTRAはエンタメ業界で働くすべての労働者が、賃金や労働環境の改善を求めて団結して戦うための組織です。そこには、アメリカという階層分断の強い社会で、業界内のすべての労働者が横の団結である労働組合を通じて階級闘争、社会運動を行ってきた歴史が反映されています。

アメリカで「エンタメ業界労働者のための労働組合」が誕生したのに、日本ではそうした労働組合が誕生しなかったのも無理はありません。階層分断があいまいに見過ごされ、労働組合が職種に関係なく正社員のための「企業内従業員組合」である日本で、「業界内のすべての労働者、ブルーカラー階級のための社会運動」としての労働組合は盛り上がりようがないのです。

もはや日本社会の階層分断はごまかしようもなく、「目に見える」格差です。労働者の半数が非正規社員で、正社員のためだけの交渉を行う労働組合など、労働者のための組織ではありません。仕事内容そのものや生活水準の違いに目を向け、業界全体や労働者どうしの横のつながりによって団結し、賃金や労働環境の改善を求めていくことこそ、日本の労働者に必要なことです。労働者が一人で経営者に対して待遇改善を求めることは不可能です。労働組合には、一人ではできないことでも、団体交渉を通じて達成するための力があります。その力を、「企業内従業員組合」としてではなく、社会運動として生かしてほしいと思います。

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