川野:先々に賃貸に出したり売却したりする可能性もあれば、そういったことも頭の片隅に入れていただいたほうがよいですね。
ベラ:耐震診断をしたとして、どのようなかたちで評価されるのでしょう。○か×かなのか、ランクのようなものがあるのか、気になります。
川野:木造住宅は、「倒壊しない」から「倒壊する可能性が高い」までの4段階で評価されますが、鉄筋コンクリートのマンションは、耐震性能を満たしているかどうかになります。
ベラ:それで耐震性能を満たしていないとなると、金額にしていくらぐらい資産価値が下がるものなのですか。
川野:将来、その周りにどれくらいに新耐震基準に準拠した建物が増えてくるか次第です。ほとんどの物件が耐震基準をクリアしているのに、一棟だけが旧耐震基準であれば、最悪、土地だけの値段になることもあり得ます。しかし現状は中古マンションには旧耐震基準の建物がかなりあります。東京の場合は、そのエリアにどうしても住みたいという方が多いので、旧耐震基準の建物でもそれなりの価格がつく可能性は高いです。また新耐震基準を満たしてないのなら、耐震補強工事をすることもできますが……。
ベラ:その場合は、マンション全体の負担になるのですね。相当なお金がかかりそうです。そう考えると、耐震診断を受けていない物件を買うのは爆弾を抱えるようなものかもしれません。
マンションの立地にも注目を!
ベラ:実はこの物件の耐震に関して、もうひとつ不安な点があるのです。マンションの1階が駐車場でピロティになっていて。こういう建物は構造が弱いと聞いたことがあります。

1階を吹き放ちピロティにして、駐車場にしている建物も多い
川野:これまでの震災の記録を見ても、ピロティがある物件は地震の際、構造的に脆い傾向があります。バランスよく壁がたくさんあったほうが建物の構造的には、強くなるのです。広くて壁のない空間は柱への負荷が大きいので、柱が1本ダメになると建物全体が傾斜したり大きなヒビが入ってしまったりというリスクが伴います。それに……実はこのマンションではもうひとつ心配なところがあります。こちらは、ゆるやかな崖のうえに建っていますよね。こういった立地は、崖の低い側に建物が傾くことがあります。
ベラ:坂道に建っている家って、負荷がかかるんですね。
川野:実際に調べてみないと分かりませんが、坂道に建っている家は部屋が傾斜している場合があります。他の部屋も同じ傾向であれば、それは建物全体が傾斜している恐れがあるということ。こういった物件は、基礎の下に建物を支える杭工事をしているかどうかをチェックした方がよいです。
ベラ:立地のわりにお得なお値段の物件だと思ったのですが、そういったマイナス条件も値段に反映していたのかもしれませんね。間取りやリフォームの素敵さにときめいていたのが、お話をうかがって冷静になりました。
川野:ピロティがあったり傾斜地の立地だったりと不安要素はありますが、それが即ダメだというわけではないのです。しかし、だからこそ、耐震診断や杭工事をしているかどうかは、重大なポイントですね。