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フェミニンな日本のポスター
日本で公開される洋画の邦題やポスターのデザインが「なんか、違うよね?」と話題になることは多々ある。今、絶賛公開中のディズニー『モアナと伝説の海』もご多分にもれず、ポスターの図柄が物議を醸している。
記事冒頭にあるのがアメリカ版ポスターと、日本版ポスターだ。
アメリカ版は主人公モアナと、相棒の半神半人マウイが描かれている。モアナは物語の重要な小道具であるカヌーを漕ぐためのパドルを持ち、両足を踏ん張っている。表情も自信に満ちている。
かたや日本版はモアナのみで、マウイは消されている。モアナは物語のキーである緑色の石を、ハートを象った手の中に収めている。表情も穏やかだ。しかし、映画本編にこのポーズのモアナは登場しない。
背景の海は日米よく似ているが、日本版はブルーのトーンが薄目に抑えられ、波頭の白が増えている。
つまり、日本版はオリジナルであるアメリカ版の「強さ」を何重にも抑え、控え目でフェミニン、ガーリーに改変しているのである。
理由は「“優しい”イメージのほうが日本では受け入れられる」→「観客動員数が増える」という思惑だろう。ただし、優しいイメージが実際に観客を増やしているのかは証明のしようがない。
ゆるふわの輪廻
子どもの観る映画はほとんどの場合、親、特に母親によって決定される。したがって“優しく”かつ“女の子らしい”ポスターは母親がターゲットだ。“ゆるふわ”文化で育った母親は日本版のポスターを見て好感を持ち、幼い娘に『モアナ』を観せる(と憶測されている)。
すると何が起こるか。
『モアナ』はアクション・ムービーである。モアナとマッチョなマウイが大暴れする。作中、あの超過激アクション映画『マッドマックス~怒りのデスロード』へのオマージュさえ含まれているのだ。同作の主人公は、シャーリーズ・セロン演じるフュリオサであった。
幼い少女たちは『モアナ』をみて、モアナの可愛らしさと優しさ、冒険&アクション、自分の道を自分で決める独立心、恐れをはね除ける勇気、そしてリーダーシップに憧れるだろう。最初は教えを乞わなければならなかったマウイにさえ、成長したモアナが一喝するシーンもある。この映画を観た少女たちは「女の子が持つ強さ」の存在を認識する。
実はそうした強さを学んだ世代がすでに成長し、観る映画を自分で決める年齢となっている。彼女たちは、強さを何重にも抑えた日本版のポスターよりアメリカ版のポスターに惹かれている。中にはすでに母親となっている女性もいる。
そう考えると、日本のゆるふわポスターは果たして目論見どおり機能しているのだろうか。
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