ブロンドは「セクシー」「バカっぽい」「フレンドリー」
かつて一大ブームを巻き起こし、いまだに再開の噂が出ては消える海外ドラマ『フレンズ』。その主役のひとり、フィービー役のリサ・クドローは美しいストレートのプラチナ・ブロンドで知られた。しかし、後にCNNのインタビューで地毛はブルネットであり、ブロンドに染めていると、はっきり認めた。同時に本来はタブーであるブロンドにまつわるエピソードを赤裸裸に語った。いわく、染めた瞬間に自分自身の気分が明るくなった、周囲の人間が少し親切になって、気軽にいろいろな情報をくれるようになったとのこと。
ブロンド女性には「セクシー」や「魅力的」と同時に「頭が弱い」というステレオタイプもある。インタビュアーが「つまり、皆、あなたをバカだとみなすわけですか?」と聞くと、クドローははっきり「イエス」と答えている。「話してくれた情報を私が活用できないと思うわけね」
「ブロンドは魅力的 or バカ?」は多くの女性が関心を持つテーマであり、中には実験を行った女性もいる。まずブルネットで、次いでブロンドに染めてから街を歩き、それぞれ男性から声がかかる回数をチェックし、他人に自分の印象を尋ねたのだ。
結果はクドローの発言と重なる。ブロンドのほうが男性からの声が多くかかり、デート・サイトでも圧倒的な人気を得る。同時に女性からも「優しそう」「おっとり」などと好感を持たれる。実験を行った女性自身が結果にショックを受け、涙ぐむシーンがある。当人にとってはブルネットでもブロンドでも自分に代わりはないのだが、アメリカ社会はそうは受け取らないことに傷付いたのだ。
こうして「ブロンドが魅力的で人を惹き付ける」ことから、映画やドラマにもブロンドの女優が多く出演することとなる。『フレンズ』も主演女優3人のうち、クドローとジェニファー・アニストンがブロンドだった。アニストンももちろん染めている。3人全員がブロンドではバランスが取れないため、残る一人はブルネットだった。
『セックス&ザ・シティ』も同様に、主役のキャリー(サラ・ジェシカ・パーカー)も含めて2人がブロンド。他の2人はブルネット、赤毛という取り合わせだった。映画やドラマに於けるこうした女優の髪の色の配分は偶然ではなく、計算されたものである。
また、弁護士や大学教授などインテリな役を演じる女優の髪はブルネットであることが多いのは、先に挙げた「ブロンド=頭が弱い」のステレオタイプに基づき、敢えて避けているのである。
大統領候補も揃ってブロンドだった
ブロンドに染めること自体は決してネガティブではない。白人と言っても肌の色味や濃淡、顔立ちはさまざま。持って生まれた髪の色が似合う人ばかりではない。
ニューヨークのローカル・ニュース専門局のある女性キャスターはアッシュ・ブロンドと呼ばれる、ブロンドといっても灰色がかった、しかもまだらに濃淡のある髪だった。ある日、そのキャスターが明るく艶のあるブロンドに染めて番組に登場した。一目で「へー、見違えた!」と好感度がアップしたメイクオーバーだった。
女性初のアメリカ大統領となるはずだったヒラリー・クリントンも地毛はブルネット。ビル・クリントンと恋人同士だった大学院時代の写真を見れば分かる。卒業後に弁護士となった頃、もしくはビルがアーカンソー州知事となり、自身も知事夫人となったあたりからブロンドに染め始めたようだ。地毛はブルネットといっても赤茶色っぽく、今のブロンドのほうが表情が明るく、若々しく見える。
ブロンドと言えば、ドナルド・トランプこそ見事なプラチナ・ブロンドである……が、トランプの髪についてのコメントは差し控えておこう(ちなみにヒラリーもトランプも70歳を超えているため、地毛はすでに白髪のはずである)。