「女の子は勉強しても意味がない」 シングルマザーの貧困とその連鎖は女子教育軽視の産物である

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シングルマザーの教育水準と教育投資のための資源水準

はじめに書いたように、シングルマザー世帯の貧困の連鎖は女子教育軽視の産物だと言えます。

全国母子世帯等調査によると、平成23年時点でひとり親世帯の数は約146万世帯にのぼり(日本の子供の約8人に1人はひとり親世帯で暮らしている計算になります)、そのうちの約85%が母子世帯です。

シングルマザーの特徴の一つとして、教育水準が低いという点を挙げることができます。全国母子世帯等調査によると、シングルマザーの中で教育水準が大卒またはそれ以上の人の割合は6.9%となっていますが、同時期の国勢調査の結果を見ると15歳以上の女性の中で大卒またはそれ以上の教育水準を持つ人の割合は11.9%となっています。調査対象の層の違いを考慮すると、シングルマザーで大卒の人の割合は、婚姻世帯の女性のそれの半分程度ぐらいになるのではないかと考えられます。この現象の背景の一つとして、女子教育が、「結婚年齢が上昇する」「男性と対等に接することができる」といった、離婚につながりづらくなる要因に影響を与えるためだと推測されます(この点は三回目の記事でも言及しました)。いずれにせよ、このシングルマザーの教育水準が一般的に低いという特徴が、シングルマザーの貧困とその連鎖の一因となっています。

表1 シングルマザーの教育水準別年間収入

表1 シングルマザーの教育水準別年間収入

上の表は全国母子世帯等調査で集められたシングルマザーの教育水準別の所得水準を表しています。この表が示すように、教育水準が低いシングルマザーほど貧困状態に直面しています。原因の一つはやはり教育水準の低いシングルマザーほど就労収入が少ないということですが、もうひとつ、前述のように女子教育は女性をエンパワメントし、配偶者との交渉能力を高めることに寄与します。これが離婚の際の養育費交渉にも当てはまり、教育水準の低い女性ほど養育費の受け取り状況が悪くなっています。

もちろん、夫婦の教育水準は同程度になる傾向があるので、高卒シングルマザーの元配偶者の経済状況が大卒シングルマザーのそれよりも厳しい状況にあり、養育費の支払いに支障をきたしている可能性もあります。しかし、離婚時に養育費の支払いに関して文書で取り決めをした高卒のシングルマザーは約24%しかいないのに対し、大卒シングルマザーの約41%はこれを行っています。この差がエンパワメントの差だと考えられ、交渉能力の高低も要因の一つであることは十分に考えられます。

このように就労収入と、養育費などを含む非就労収入双方で差が生じるため、平均すると大卒シングルマザーは高卒シングルマザーよりも年間で163万円多く収入を得ることができています。そしてこれが子供に対する教育投資額にも反映されていると考えられます。このことを考慮すると、特に教育水準の低いシングルマザーの子供に対して公教育支出が私教育支出を補う形で重点的に投下される必要があると言えるでしょう。

母子世帯間の教育水準による教育希望格差

さらに、教育水準の低いシングルマザーの子供の教育問題は、教育投資に充てられる資源量(お金や時間など)だけでなく、親の教育期待格差(希望格差)を通じても発生しています。

表2 シングルマザーの教育水準別、希望する子供の教育水準

表2 シングルマザーの教育水準別、希望する子供の教育水準

全国母子世帯等調査で集計された上の表が示すように、大卒シングルマザーのほとんどが子供に大学まで行くことを希望している一方で、高卒シングルマザーの中で子供に大学まで行くことを希望しているのは1/3にも満たない状況です。

このような希望格差が子供に対する教育投資に反映されるのはもちろんですが、親から子供への教育支援にもこれが反映されるでしょうし、子供の学習意欲にも影響があると考えられます。例えば、途上国では金銭的に中学校に進学できる見込みがない子供はそもそも小学校の段階で退学してしまいますが、日本でも同様に家庭の事情で大学に進学できる見込みがない子供が高校での勉強だけでなく、ほぼ高校に全入している状況を考えると中学時点で勉強に身が入らなくなっている事態が想定されます。これらが先に示した学力格差の一因になっていると推測されます。

つまり、シングルマザーの貧困と貧困の連鎖を改善するためには、大学進学時点はもちろん、高校段階での支援でもすでに手遅れになってしまっている可能性があるのです。より早期の教育支援こそが必要とされています。

まとめ

日本のシングルマザーの特徴として教育水準が低い点が挙げられますが、その教育水準の低いシングルマザーの世帯で貧困の連鎖が起きやすい状況にあります。この問題の根っこにあるのは、「女の子に教育はいらない」という意識ではないでしょうか? 女の子が教育を受けても結婚して家庭に入るのだから意味がない、女の子が教育を受けても嫁に行けないまたは行き遅れるだけだ、というのは昔の日本ではそうであったのかもしれません。

しかし、現代の日本では「離婚」という要因も考慮に入れる必要があるでしょう。確かに、男女ともに教育水準の高い人ほど初婚が遅れる傾向がありますが、それと同時に教育水準の低い人ほど離婚率が高いという事実があります。そして家庭に入ったとしても離婚した場合に起こる惨状は記事中で説明したとおりです。自分たちの娘と孫、ないしは自分自身と将来の子供が貧困に陥らないためにも、21世紀を生きる我々には、女子教育に対するマインドシフトが必要ではないでしょうか?

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