
Photo by Marco Assini from Flickr
近年、フリーランスという働き方が注目を浴びています。フリーランスは正社員として特定の企業や雇用主に縛られることなく、仕事あるいはプロジェクト単位で、個別の仕事を請け負う働き方をしている人たちのことです。例えば、デザイナーやライターなど、クリエイター職のように、個々人の技能によって成果を出し、仕事を請け負います。自由度の高い働き方という労働者側の利点に加え、企業の業務アウトソーシングの増加により、フリーランスという働き方を取る人が増加しているようです。その人口は50万人とも200万人とも言われています。
働き方の自由度に注目が集まるフリーランスですが、被雇用者として労働法によって守られていないというリスクもあります。しかも、本当に「自由」になっているのは、むしろ規制の枠外で労働者を使えるようになる雇用者という側面もあります。たとえば、企業に毎日出勤し正社員のように働いているフリーランスの場合、労働法の適用外であるため、残業代や労働時間の短縮を強く要求できません。またフリーランスが仕事を請け負う際、業務の実態について把握することは困難です。業務実態に見合うのかどうかわからない報酬を提示されていても、その判断をする材料を得られないのです。こうした情報の非対称性はブラック労働の温床ともなりえます。
「働き方革命」が声高に叫ばれるようになり、政府も徐々に本腰をあげて取り組みつつあります。そんな中、注目される「フリーランス」という耳触りのよい言葉の裏には厳しい現実が見えてきます。
派遣やフリーランスが増えて得をするのは?
そもそも、労働法は賃金や労働時間を規制し、労働者を守るための法律です。その対象から外れる労働者が増えれば、これまで以上に低賃金、不安定な状況で働くことになる労働者も増えていくことでしょう。労働規制が無ければ、労働時間は無制限の青天井、仕事の成果を一つの単位とした支払いや出来高払いでは、時間当たりの賃金はどこまでも下がっていきます。フリーランスというのは、聞こえの良い非正規雇用、それも労働法にも全く守られていない非常に不安定な働き方でもあるのです。
2000年代以降、契約社員や派遣労働者などの間接雇用が急拡大してきた背景には、正社員という直接雇用によって雇用主が請け負わなければならない責任を回避するという、政府と企業の思惑がありました。
たとえば、労働の規制緩和を推し進め、非正規雇用を推進した小泉政権下において、金融・経済財政政策担当大臣、内閣府特命担当大臣、郵政民営化担当などを歴任し、一連の「聖域なき構造改革」いわゆる規制緩和をけん引した竹中平蔵氏は、政界引退後に大手派遣会社パソナグループ会長に就任しました。以後、経済学者としてなのか派遣会社会長としてなのか、正社員を無くすべきである、正社員と非正社員の格差をなくすべきであるという主張を繰り返しています。
派遣会社は、正社員が派遣社員に置き換えられることで、より多くの中間マージンを得ることができます。フリーランスも、エージェントや派遣会社などの仲介を通じて仕事を見つけています。したがって「正社員を無くすべき」「正社員と非正規労働者の格差を無くすべき(正社員の賃金や待遇を下げるべき)」という主張が実施されれば、さらに派遣労働者やフリーランスが増え、派遣会社はさらに儲かるのです。実際、パソナは、フリーランスと企業をマッチングする業務も行っています。
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