アメリカ式「食のダイバーシティ」~ユニコーン・フラペチーノから醤油まで

文=堂本かおる
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スターバックス公式インスタグラムより

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 米国スターバックスでは4月19日からたった5日間の期間限定商品『ユニコーン・フラペチーノ』の販売が終了した。販売最終日の2日前には多くの店舗で売り切れてしまうほどの大人気だった。

 近年、アメリカでは「ユニコーン・カラー」のお菓子・パン・アイスクリームが人気で、ユニコーン・フラペチーノもそれに乗じたものだ。ユニコーン・カラーとはパステルカラーのブルー、ピンク、パープル、イエローなどをミックスした色合いを指す。アメリカのお菓子にドぎつい原色のものが多いのは知られるところだが、ユニコーン・カラーも一般的な日本人の感覚では、やはり腰が引けてしまう色合いではある。

 アメリカの極端な限定販売商品と言えば、昨年の11月にマクドナルドがビッグマックの大型サイズ『Grand Big Mac』を出した。これだけでなんと890カロリー。フライドポテト(L)とコーラ(L)を付けると計1,700カロリーと、ほぼ1日分の熱量になる代物だ。

 カロリーであれ、見た目であれ、アメリカの食べ物には限度知らずの「なんでも来い!」感がある。しかしニューヨークのような都市部に暮してみると、周囲にはなんらかの「食の制限」を設けている人が意外に多く、制限の内容や理由もさまざまであることに気付く。また、そうした周囲の食の制限は、自ずと自分自身にもかかわってくるのである。

アレルギーから宗教まで

 以下は主だった「食の制限」の理由だ。

食物アレルギー
アレルギー以外の疾患
ダイエット
ベジタリアン
オーガニック
宗教

 アレルギー、疾患、ダイエットのために食餌制限を行っている人は日本にも少なからずいる。アメリカのほうが格段に多いと思えるのが菜食主義ベジタリアンだ。ベジタリアンにもいくつかのグループがあり、肉は食べないが魚は食べるペスカトリアン、魚/卵/乳製品はおろか、蜂蜜まで含めて動物性の食物を一切断つヴィーガンもいる。ヴィーガンの中には動物愛護が理由の人もいる。ベジタリアンのように動物性食物を控えるわけではないが、肉も野菜もオーガニックしか摂らない人もいる。他にも健康上の理由で特定の食物を制限したり、特定の調理法のみを実践する人もいる。宗教の中には食のルールが決められているものがあり、ニューヨークのような多民族都市は多宗教都市でもあり、異なる信仰を持つ人々がそれぞれの食のルールを守って暮している。

 筆者自身は多少の好き嫌いはあっても、基本的には何の制限も設けていない。いや、設けていなかった。渡米後何年も経ってから花粉症となるまでは。以後、特定のフルーツを食べるとアレルギー症状が出るようになり、アボカド、スイカ、メロンを諦めざるを得なくなった。最近は大好きなアメリカンチェリーもあやしくなってきた。食べると喉がイガイガするのだ。花粉症と果物アレルギーの医学的な関連には不案内だが、アメリカ人の夫も同じ経路を辿っている。

 それでも我が家は果物以外に制限するものは何もなく、気軽に何でも食べている。その気軽さで失敗したのが来客時だ。夫の友人がやってきた時、その人が救急車で運ばれたこともあるほど重篤なナッツ・アレルギーであることを知りながら、うっかり普段愛飲しているヘイゼルナッツ・コーヒーを出してしまったのだ。ヘイゼルナッツ・コーヒーはアメリカでは一般的で、どこででも買えるものだ。

 コーヒーを一口すすった瞬間に本人がナッツのフレーバーに気付き、あわてて洗面所に走って吐き出し、常に持ち歩いてる薬を飲んで事無きを得た。後でコーヒー豆の缶を確かめると「合成フレーバー」だったのだが、その時は「人を殺していたかもしれない」と考え、震え上がった。

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