つい先日も『マツコ会議』(日本テレビ系)で30~40代の子育て世代の女性が数人で飲んでいたところにインタビューマイクが向けられた。彼女たちは小学生の子をもつ「ママ友」の集まりだったようで、案の定「ママ友がこんな時間に飲み会!?」というツッコミを入れられていたのだが、彼女たちの反応は「え? いいじゃん別に」ではなく、「そうなんです!今日はダンナに見てもらってるので~♪」と何の疑いもなさそうにはしゃいでいた。彼女たちは、夫の負担にならないよう早い時間から集まり、早い時間の帰宅を予定していると言う。
夫という立派な父親が在宅してるのだから、せっかく数人で予定を合わせて会えた日ぐらい、朝まで飲んでもいいだろう。そこまで窮屈に考える必要ないのでは……? と私が思っていたら、スタジオからはマツコが「まぁ~これが毎週だったら問題だけどたまにだったら良いと思う!」という“常識的な”意見。
これが子持ちのサラリーマンたちの集まりだったら、週1で終電まで飲んでいても何の問題にもならず、そもそもピックアップされることすらないだろう。だって当たり前の光景なのだから。
何そのズレた見解! とヤキモキしながら見ていたが、彼女たちも「ですよね~! マツコさんわかってる~♪♪」と、あたかもこの(拘束された)飲み会を容認してくれたことをありがたがるような反応。まるで他人に子供を預けて遊んでいるかのような言葉だ。夫は、子の父親は、「子供の世話をするべき人間」ではないのだろうか?
家庭をもった以上、家庭人としての「役割」があるのは分かるが、基本的には自分単体の時間を持ってはならないほど家や子供に縛られることが「女性の役割」だとしたら、その理由は何だろう。
完全母乳を遂行している乳児がいるとかなら、母親の行動が制限されるのは物理的に仕方ないとは思うが、今回の場合は小学生の子を持つ母親たちだった。
なぜ母親が、子供と一緒に家にいて面倒を見るという役割を全面的に担わなければならないのだろう? という疑問と、飲み会だというのに窮屈な状況を強いられながらも母親たちがそれを当然のように受け入れて「ダンナに感謝☆」とか言っている世間の暗黙に腹が立ちモヤモヤしてしまった。
母親でなくても十分に子育てがなされる環境を確保できていたとしても、母親が夜に出歩いていたらふしだらのレッテルを貼られるだろう。父親が飲み歩くように母親が飲み歩いてもいいはず、つまり父と母で同じ役割をスライドできるはずなのに、女性はなぜ「家庭に縛られるべき」というルールを強いられ、了解してしまうのだろうか? この暗黙の認識は、いったいどの地点からスタートしているのだろう?
“稼ぐ”のは男性だけの仕事じゃない。でも“家を守る”のは女性だけの仕事?
子供がいようがいまいが、専業主婦だろうが共働きだろうが、女性のみに「家庭を守る」という義務が生じるようだ。
とある日の『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)での人気コーナー「本音でハシゴ酒」でモデルのアンミカ(45)がゲスト出演していた。
話題は、2012年にアンミカが結婚した夫のセオドール・ミラーについて。二人には子供はいないのだが、夫婦仲睦まじく生活をしているという主張の中で彼女が自然に放った一言が私には引っかかって仕方なかった。
『私はこうして働かせてもらってるので……』
“夫に食べさせてもらってるので……”ならまだわかるが、働く=稼ぐことであり、アンミカ自身が家庭の収入を得ているのにそれをなぜ、敢えて「感謝」のエピソードとしてピックアップしなくてはならないのだろう?
まるで、家庭に縛られるべき立場なのに、こうして社会に出て活躍させてもらってる、とでも言いたげだった。
場は何の違和感もないような雰囲気で流されていたが、私には違和感だらけだった。
これは理屈でいえば、結婚するときに「夫は仕事・妻は家事」という契約をしたにも関わらず、妻が仕事を持ち、そのせいで本業である家事を夫にやってもらわざる負えないという状況下にのみ成立する言葉なのではないだろうか。
他にもネットサイト上で、妻の立場にある女性のこんな相談を見かけた。
「幼稚園児の子供が居る共働き夫婦ですが、最近体力が落ちたのか夕方になると身体がしんどく、食事作りが手抜きになってしまいます。夫は文句も言わず食べてくれますが……お弁当も冷凍食品が多くなってきてしまい、本当に申し訳ないです。私がへとへとなので夫は帰ってから毎日子供をお風呂に入れてくれています。早く今の状況を抜け出したいです、良いサプリや改善法があれば教えてください」
夫と同様に仕事をしていてプラスで家事も育児もさらには弁当作り!? バランスおかしくないか!? と私にはビックリだ。だと言うのに夫は子供を風呂に入れただけで感謝される……?
しかもそれにとどまらず、「手抜きの食事を文句も言わず食べてくれる」ってどういうことなんだろう。むしろ妻がここまで一人で担っているのに食事の準備をするだけ夫は妻に大感謝、とならなければおかしくないか?
「家事は女がする仕事なのに」という古くからの大前提が動かないまま、「女性も外で働いて輝こう」といわれている。他にどんな日常的な項目(仕事など)があろうが関係なく、家事や子育てを女性側が「できない」状況だけをピックアップされがちで、当人たちもその認識の中で生きている。女性が働かなくては経済的にやっていけない現状は置き去りにして「家事は妻の仕事!」の認識だけがしぶとく根を張っている。そこに対してツッコミを入れる人が少なすぎる。
このご時世、一生専業主婦でやっていくケースや、夫の稼ぎだけで十分生活できるけど妻がどうしても働きたいので夫の反対を押し切って働くというケースの方が少数派だろう。「稼ぐ」という、古い時代で言うところの“男性の仕事”を女性も担うのが当たり前なのに、「家事・育児」という従来の“女性の仕事”を男性が担うのが当たり前になっていないのが不思議だ。
取り組む男性が増えてはいるものの「イクメン」だとか、敢えてピックアップされる対象だったりする。珍しいものじゃなくて全員フツーにやるべきことだろう。