「素敵なママに見えたい…」強迫観念がSNS更新に走らせるのか。最高の一枚に腐心する女性たち

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(C)messy

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ここ数年は、どこに行ってもSNS用の写真を撮っている女性で溢れ返っている。
もちろんSNS投稿者には男性もいるわけだが、特に多く目につくのはやはり女性だ。
彼女たちは「現在」を生きているのではない、現在を他者に見て評価してもらうための準備に常に命をかけている……私にはそんなふうに見える。

レストランに行けば運ばれてきた料理を撮影。友人同士で向かい合って無言で料理を撮影しているサマは何とも異様だ。
美味しくいただくために注文した料理なハズなのに、友人と楽しい時間を過ごす為に会ってるハズなのに、料理が冷めて味が落ちようが関係ない、数分間の沈黙も関係ない。
とにかく「かわいくておしゃれ」な写真を撮ることが最優先なのだ。
もっとも良く撮れた写真を後で加工し、SNSに投稿。「おしゃれな日常を送っている私」アピールが完了する。
ちなみに先日、『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)で小嶋陽菜は「食事の写真を30枚ぐらい撮ったうえで一番よいものを選んで投稿する」と話していた。

私自身がその行為をしているわけではないから、SNS投稿している女性の真意はわからない。「おしゃれな日常アピールなんかじゃない」と憤慨する人もいるかもしれない。偏見かもしれない。偏見に基づいた見方だと指摘されればそれまでだが、料理やら景色やらを撮影し、自分という人間の暮らしを他者に称賛してもらいたい行動は、“ホメられたい欲”だと思う。すなわち、承認欲求である。

母親はとかく自己犠牲を強いられがちだと書いたが、しかし母になった途端、様々な欲求が自動的に消滅するわけではない。承認欲求も消えないもののひとつだ。

しかし子供が小さいうちは行く場所も時間も何もかも制約されるのが現実で、特に「おしゃれ」な写真を撮影できるような場所に行けることはそうそうなくなるだろう。だから、「カワイイ私」「おしゃれな暮らしを送っている私」、このアピールが「素敵なママの私」アピールにシフトしていくのではないだろうか。

美味しいものを食べる子供<美味しいものを食べさせる自分

「素敵なママ」をアピールするのにいちばん効力を発揮するのが、子供のために作った食事の写真だろう。

私もInstagram(以下、インスタ)のアカウントを持っている。
つい最近、いきなり見知らぬアカウントの女性にフォローされたことに気付いた。彼女の投稿を見てみると、そこには手作り離乳食の写真がズラリと並んでいた。
彼女にはどうやら生後4~5カ月ぐらいの子供がいるらしく、手の込んだ離乳食を用意している様子。それ自体は単純にすごいと思う。
手作りが良いかBFが良いかの考えは抜きにして、そこまで力を注げるバイタリティが羨ましいというか、自身が楽しくなければここまでできないだろうと思うので、私が「大変だ」と手こずっている項目を楽しんでできていることに、「いいなぁ」と思うばかり。
おかゆ一つでさえ、小分けにして今から保存しますという写真を載せ、おかずはお洒落な器に盛り、色とりどりに盛られている。
「ゴックン期からモグモグ期に移行中☆」などと、キャッチーな育児用語(私には違いが分からない)もちゃんと用いる。
3月の雛祭りの時期には、ちらしずしケーキ(完全にちらしずしなのだが、ケーキのようにホール状にして具を盛りつける)が堂々たる登場。
フォロワーからは『すごいっ!愛だねぇ♡♡』『〇〇ちゃん(投稿者)を見てるとホントいいお母さんで子育て楽しそうっ♡♡』『こんなにしてもらえて△△ちゃん(子供)は幸せ者だなぁ♡♡』などのコメントが相次いでいる。
『いや、4カ月じゃ食えないだろ……』と思ってしまった私は、彼女たちがイメージする“良いママ”からはきっと外れていることだろう。食べられるかどうかは問題ではなく、子供のための食事やイベントに手間隙をかけていることが「愛だね~」「△△ちゃんは幸せ者♡」というコメントに値するのだ。

子供を愛してるママっぽいことをすれば、良いママと称賛される。肝心の子供がどう受け止めているのかは関係ない。そこに私はどうしても鼻白んでしまう。

見知らぬこの投稿者は、「子供のためにここまでやってる私」を他者に評価してもらいたいのだろうか。
私もかなり本格的に離乳食作りに挑んだことが何度かあるが、少なくとも調理途中でいちいちスマホで写真を撮るほどの余裕はなかった。
もちろん、自己満足の範疇で育児日記代わりにインスタを利用している可能性だってあるし、いちいち「写真に撮る→インスタにUPする」ことが、その人にとってごく自然な動作になっており煩わしさを覚えることがないのかもしれないが。
「それが私の普通だ」と言われてしまえば返す言葉もないけれど、そういう写真の投稿は、美味しいものを食べる子供ではなくて、美味しいものを食べさせる自分にフォーカスしているように見えてしまう。

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