「素敵なママに見えたい…」強迫観念がSNS更新に走らせるのか。最高の一枚に腐心する女性たち

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幼い子供は最も“美しい景色”

Facebookでは、遥か昔に友達申請し合って何年も付き合いがない間柄の知人からも近況が届いてくることがある。

ある古い友人は結婚前から、髪型・服装・メイク全て流行に沿ったものをチョイスするタイプで、いわゆる「量産型」と揶揄される女性だった。
どんなときも「かわいい」「おしゃれ」を最重要視していることが見てとれ、友人たちはFBに「〇〇ちゃんやっぱカワイイな~」とコメントするのが「お約束」になっていた。
そんな彼女も数年前に結婚・出産し、最近は家族写真をSNSに投稿することが多くなっている。主に、自分と娘の2ショット写真だ。
可愛い我が子と自分の2ショット写真ぐらいは、親なら誰だって記念に撮るだろう。
でも決定的に「?」マークがついてしまうのは、彼女が投稿するどの写真も、娘がピンボケしていたり「えっこんな顔だったっけ……」と思ってしまうほど酷い写りであろうとも、母親が綺麗に撮れてる写真だということだ。
あくまで「△△(娘)とお買いもの中☆」とか、娘との時間を大切にしている主旨の投稿であるにも関わらず、娘にピントが当てられていない。
もちろんコメントには「ママになっても変わらずカワイイ!」「こんな可愛いママで△△ちゃんは幸せだねっ!」というお決まりフレーズが軒並み連なっている。
大袈裟でも創作でもなく、本当にそうなっているのだ。

こういった女性は多く存在し、他人の投稿をたまに覗いてみるとやはり同じようなことがあちこちで見受けられる。

ある知人女性は、芸能人気取り(?)のセレブママをイメージしている装いで、娘との2ショットを頻繁に投稿しているが、こちらもやはり様子がおかしい。
まるでファッション誌のモデルかのように自身がスタイルよく見える角度でポージングを決めていたり、小顔に見えるような写り方をしていたり……どう見ても子供と記念に撮っているようなテンションではない。
2ショットであるはずの子供はと言えば、完全にカメラ目線からそれて別の所に注意がいってしまっていたり、フレームアウトしていたりする。何度も撮りなおしているうちに子供が飽きて動き出してしまうのだろう。

「立派に母親業をやってます」や「ママと子供の穏やかで優しい時間」というテーマはブレない。でも、他者に見てもらいたいのはやはり「自分」。「ママになっても相変わらずカワイイ!」を得なくてはならないから、子供とセット撮影なのは必須だ。

こんな小姑の小言みたいな発言をするのはよくないが、SNS上では子供が自分を引き立てるためのアクセサリー状態になっているんじゃないか、としばしば思う。

ママは他者の承認を求めるなとか(夫と子がいりゃいーじゃないか、とか)、オシャレしてるヒマがあったら子の世話してろとか、そういうのも絶対違う。髪を振り乱して睡眠を削って育児に翻弄されてるのが「正しい母親の姿」だなんておかしい。

一方で、「ステキな自分」演出に余念がない彼女らの投稿を見ると、げんなりする。

誰か私をホメてくれよ~~~という「圧」を感じる。つまり、幸せそうな演出の裏側にある孤独感や焦燥感が透けて見えて、しんどい。

いちばん周囲を騙せるツールはSNS

過剰ともとれるほどの承認欲求を抱える彼女たちの心にあるものは一体何なのか。まるで他者からの称賛を得なければ呼吸ができなくなりそうな勢いにも見える。
彼女たちにはこれまでマウントし合ってきた歴史があって、他者より自分が優位に立っていたいという願望、というか、優位に立っていなければならないという強迫観念が染み付いているのかもしれない。
その願望をSNSというツールは手っ取り早く叶えてくれる、ように見える。

でも実際、それは「手っ取り早い」ことだろうか?

私はSNS用に写真を何十回も撮りなおさないしでステキ加工を施した投稿もしないが、それは面倒だからである。
母性たっぷりの表情で愛おしげに、なおかつ美しい顔で子供との2ショット写真を載せるとする。後ろには観葉植物やらお洒落なインテリアが絶妙な具合で写りこんでいたとしよう。コメントには「良いママ♡」や「ママになってもキレイ♡」「幸せそう♡」などが連なることだろう。

しかし、その写真を投稿するには、薄化粧に見せつつも綺麗に着飾り、愛おしそうな表情で我が子を見つめ、最高の角度でシャッターを押し、画像を確認して何回も撮り直し、納得がいったらアプリを駆使してさらに美しく加工する必要がある。これで「綺麗で優しいママ」「幸せな家庭」「親子の優しい時間」の完成。手間隙がすごい。

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