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日本の異常な「地毛証明書」が、アメリカでは有り得ない理由:I Love Me!

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アイ・ラヴ・ミー!

 社会、つまり周囲の人間に認められることは、自尊心に繋がる。「自分には価値がある」と肯定することだ。アメリカの教育は自尊心(self-esteem)の育成を非常に重要視し、低学年のうちから「I love me!」(自分が大好き!)というフレーズを多用する。

 「I love me!」は人種に関係なく教えられるが、髪の質や肌の色が理由となるマイノリティの子供に、より積極的に教えることとなる。白人にも「かわいくない」「太っている」「背が低い」「メガネをかけている」「やせっぽち過ぎる」、多少年齢が上がってくると「胸が小さい」など容姿のコンプレックスを抱える子供は大勢いるが、アメリカでは白人がマジョリティであり、白人の外観、特に金髪碧眼が美のスタンダードであることに変わりはない。すると肌の色、髪の質がその対極にある黒人は「美しくない」ということになり、外観を誹る差別を受け、大きなコンプレックスを負わされて自尊心を持てなくなる。

 1960~70年代の黒人運動が盛んな時期に「ブラック・イズ・ビューティフル!」というスローガンが黒人側から生み出され、黒人特有の髪質を活かした大きなアフロヘアが大流行したのはこれが理由だ。差別の対象となった髪を誇張し、自分自身の美を大々的に肯定したのだ。しかし縮れた髪へのコンプレックスは現在も完全に克服されたわけではなく、黒人の子供向けに「私は自分のクルクルの髪の毛が大好き」「これは神様や祖先からのプレゼント」といった内容の絵本が何種類も出されている。

学校側が「髪の色と質」について学ぶべし

 黒人の髪は細かく縮れていることから、白人やアジア系と同じ髪型が出来ないこともある(逆に言えば白人やアジア系はその毛質から黒人と同じ髪型が出来ないとも言えるのだが、ここでもやはり白人を基準に「黒人には出来ない」ということになる)。具体的な例としては、黒人はストレートパーマをかけなければ白人やアジア系のようなポニーテールは出来ないが、独自のスタイルが豊富にある。学校はこれを規制できないし、当然しない。稀に白人が多数を占める学校で黒人特有の髪型を禁止し、黒人の生徒や保護者の訴えによりメディアに取り上げられて批判され、結局は黒人の髪型を認めるという騒動が起きる。学校側に黒人の髪質への理解が不足していることから起こるわけだが、同時に黒人特有の髪型は黒人のプライド、自尊心の表れであることをも見逃しているのである。

 (DNA的に)日本人であれば、生まれつき髪にウェーブがかかっていたり、茶色であっても人種問題が含まれるわけではなく、アメリカほどの溝にはならないのかもしれない。それでも「地毛証明書」は生徒本人の生まれつきの身体特徴と個性をまったく尊重しない、つまり人権にもかかわる制度であることに違いはない。

 加えて、今や日本にも「外国にルーツを持つ」子供は大勢いる。髪の色も質も様々だ。日本の学校は「地毛証明書」について再考すると同時に、「黒髪・直毛」を基準に作られた髪型を「校則」の名の下に全生徒に一律に課すことも変えるべきだろう。

 文部科学大臣は9日の定例記者会見で地毛証明書について質問され、「各校の判断に任せる」「省としての指導はない」と答えたが、提案がある。文部科学省は全国の学校で教師を対象に、個々人や人種によって髪質や色が違うこと、髪質によって出来ない髪型があること、髪の手入れ法も異なること、さらに髪質や髪型を生徒の自尊心、個性、人権と重ね合わせて捉え直すワークショップを開催、もしくはオンライン・プログラムを開発してはいかがだろうか。まずは髪についての正しい知識を学校側が得るべきなのである。

P.S. 日本に暮らす、あらゆる髪質とあらゆる髪色の子供たちへ、愛を込めて。
(堂本かおる)

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