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「好きな人に出会える場所にいたい」青森出身の飲食店勤務女性が10年間東京で生活する理由/上京女子・ケース1

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ここではないどこか。長野、そしてカナダへ

仙台での生活は楽しかったが、半年ほど経つと、どこかへ行きたい欲がむくむくと湧き上がってきた。

「なんて言うか、飽きたんだと思う。ここじゃないとこに行きたい! 知らない場所で働きたい! っていう気持ちが出てきて」

そこでえりちゃんが次に選んだ場所は、長野だった。「『白線流し』に憧れていたから」と恥ずかしそうに教えてくれた。長野には1年ほど滞在し、製造会社でパソコンの組み立てなどを行っていたそう。住まいは会社の寮だった。

そこから、彼女はさらなる新天地を目指す。「海外に行ってみたい」とお金を貯めて、カナダへ留学したのだ。

東京は特別な町じゃないけど

私がえりちゃんと出会ったのは、ちょうど彼女がカナダから帰ってきて東京で働き始めたばかりの頃だった。

「なんで東京に?」

「留学するって言って日本を離れたのに、結局お金が続かなくて一カ月半で帰ってきちゃって、実家に戻りにくかったから。それに、妹が当時東京に住んでいたから、一緒に住んだら家賃も安くなるし」

上京するきっかけなんてそんなものだろう。東京で一旗揚げてやる! なんて野心を胸に訪れる人のほうが、現代では少数派だと思う。ただ、本人が意図している、していないに関わらず、東京には地方にはない選択の幅がある。特に、出会い、という点に関しては。

26歳、初めての彼女

えりちゃんが「女性が好きだ」と私に打ち明けてくれたのは、出会ってから4年目のことだった。小学生の時にうっすらと気付き始め、中学時代に本気で好きになった初恋の相手も女性だったという。

けれど、長い間、彼女が付き合う相手は全員男性だった。「自分らしくいたい、変わりたい」と思いながらも踏み出すことはできず、19才までに6人の男性と付き合った。男性と付き合うことで自分をごまかし、本当の気持ちを見ないようにしていたそう。

そして、20歳になる直前、「好きじゃない人と付き合うのはもうやめよう」と決め、付き合っていた彼氏に別れを告げた。この決断は、すなわち「自分は同性が好きなんだ」と認めることであり、それはとても勇気がいることでもあった。自分の気持ちを直視するきっかけをいつも探していた彼女は、20才という節目、大人として認められるその年に、自分の選択で自分らしく生きていこう、と決意したのだ。

ただ、そう決めてからも、なかなか女性が好きな女性に日常生活で出会う機会はなく、恋人ができることのない数年間が続いた。数年後、同性愛の人たちが集うオフ会で同い年のリカちゃんと出会う。リカちゃんはぽっちゃりしていて、見た目はタイプではなかったが「人柄に惹かれ」付き合うことになり、ほどなくして半同棲生活が始まった。

現在も付き合っているのか、と聞くと、「5年付き合ったけど、FTM(=身体は女性だが性自認は男性。手術をして男性の身体や戸籍を得た人なども含む)に浮気されて別れた」と、えりちゃんはぽつりと言った。

リカちゃんは、出会い系サイトに登録し、そのFTMの男性と浮気をした結果、えりちゃんに別れを告げたのだ。

リカちゃんと別れてからは彼女はいないけれど、「デートはしている」とのこと。今日、待ち合わせに遅れたのも、昨晩から朝までデート相手と飲み明かしていたことが原因だったらしい。

「めっちゃ出会い系にはまってる。今日の夕方会う人で11人目」

えりちゃんが使っているのは、女性専門の「Find f」という出会い系アプリだ。

好きなタイプは「健康的なひと」。前の彼女がかまってちゃんのメンヘラタイプで、共依存気味だったため、今後は自立した大人同士の付き合いをしたい、と言う。

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