田中:たしかに不動産業者は①と③の場合、「レインズ(REINS)」という業界関係者用の総合情報サイトに物件情報を掲載しなければなりません。そうすると、ほかの不動産業者から「あなたの会社が媒介契約を結んでいる物件を買いたい人がいる」と問い合わせがきます。でも本音では媒介契約を結んでいる業者は、自分で買い手を見つけたい。なぜなら、買い手からも売り手からも手数料が取れて最も多い利益が見込めるからです。
そこで、専任媒介契約を持っている業者はほかの業者からの問い合わせに対して、まだお客さんがいなくても、「商談中です」と嘘をつくことがあるんです。そうしておいて、自分で一生懸命探す。これをされてしまうと、その物件はうまく流通しなくなってしまいます。
姉ケ崎:それは困りますね。では、②の方がよいのでしょうか? 一般媒介契約にして複数の業者に競わせれば、ひとつの業者が情報を操作して物件を独占することはないですよね。
田中:そうですね。でも手間はかかりますよ。複数の業者に頼むとなると、売主さんが鵜飼いのように不動産会社をコントロールしないといけないですから。一方で①の専任媒介の場合はお任せしっぱなしにできるので楽だけれども、先ほどお話したように騙される可能性がある。
姉ケ崎:うわー! どっちもどっちですね。
仲介担当者を見分ける裏ワザ
田中:専任媒介で、不動産仲介会社の担当者が誠実かどうか調べる方法はあります。2016年1月から専任媒介契約を結ぶと、チェック用のURLとパスワードが記載された証明書がもらえるようになりました。自分の物件について“のみ”売り手もレインズの掲載情報が見られるんです。その物件ページには売却のステータスが出るんですね。「今情報公開中」「購入の申し込みがありました」「売るのを一旦中止しています」と、3つあるんです。
それをチェックすれば、自分の物件の動きをざっくりと知ることができます。でも「公開中」といっても、問い合わせがあれば「もうすぐ契約なんです」と嘘をつく業者がいないわけではないので……。
姉ケ崎:結局、自分の物件がちゃんと売り出されているかどうかは、わからないんですね。
田中:だから、売主さんが自分で問い合わせちゃうんです。「もしもし、どこどこ何丁目のいくらのマンションまだありますか? 紹介したいお客さんいるんですけど」って、他業者のふりして電話をする。