LGBTの次はSOGI? 看板を入れかえるだけでは失われてしまうSOGIの本当の意味と意義

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じゃあSOGIって何?

SOGIとは、Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の略です。

そもそも何て読むの? って話ですが、「ソギ」「ソジ」の二つがありどちらが正しいわけでもないようです。

先に性自認を説明すると、これは「自分がどんな性別であると認識しているか」ということです。だから「私は女性です」とか「私はクィアです」といった表現がされます。人間の性自認で多いのは「女性」「男性」とされています。

一方で性的指向というのは、性的欲望の向く相手をどんな性別だと思っているか(「あの人は女性だ」と認識している、とか)と、自分の性自認との組み合わせのことです。人間の性的指向で多いのは「異性愛」、そして「同性愛」と「両性愛」とされています。

例えば、Aさんという人がいたとします。生まれた時に医者に「男の子」と言われたかもしれないし、「女の子」と言われたかもしれないけど、そんなこととは関係なく、Aさんは「女性」と自分を認識しているとします。これがAさんの性自認です。もし生まれた時に医者が「女の子」だと言っていたら、Aさんはシスジェンダーというカテゴリーに入れられます

そんなAさんが付き合いたい、セックスしたいと思う相手は、いつも女性です。いや、正確に言えば、「あの人は女性だ」とAさんが認識している人たちです。相手がどんな性自認を持っているか、生まれた時に医者が何て言ったかは関係なく、Aさんの認識において「あの人は女性だ」とされている人たちです。女性として女性に性的欲望を持つAさんの性的指向は、「女性&女性」という組み合わせなので「同性愛」というカテゴリーに入れられます。

このように、人は自分の性のあり方によって様々なカテゴリーに入れられます。その時に基準として使われるのが、性的指向と性自認、つまりSOGIということです。

つまり、SOGIとは「基準」あるいは「尺度」の名前なんです。

これまで使われてきたLGBTという言葉は、人を指す言葉でした。LやGやBやTという人々がいて、その人たちをまとめて呼ぶ言葉でした。そこに無理があるから、こぼれ落ちるアイデンティティがあるわけです。

でも、そもそも誰かをLだとかTだとか言って分類する時には何らかの基準を使っています。それがまさに性的指向と性自認(SOGI)だった。つまりLGBTという概念が成立するために必要な、前提となる概念がSOGIということになります。

例えば身長っていう概念が無ければ「チビ」という概念は生まれませんし、体重という概念が無ければ「デブ」という概念も生まれません。SOGIとLGBTの関係は、「これまでCBDB(チビ、デブ)という言葉がよく使われてきたけれど、そもそも身長と体重という『基準』に注目すべきじゃないか?」と考えて、SCTJ(ShinCho & TaiJu)という言葉を広めようとしている、みたいなものと考えると分かりやすいかもしれません。

SOGIという言葉の意義

なぜ「基準」や「尺度」を表すSOGIという言葉を使おうとしている人たちが多いのか。それは、SOGIがLGBTという言葉からこぼれ落ちるアイデンティティをも含む包括的な概念であることだけではありません。

例えば身長や体重は「チビ」や「デブ」とされる人たちだけに関係するものではありません。なぜなら、身長と体重という概念が存在しなければ「中肉中背」というカテゴリーも存在しなくなってしまうからです。中肉中背の人たちもまた、身長と体重という概念の当事者なんです。

性的指向と性自認(SOGI)もまた、LGBTやそこからこぼれ落ちるアイデンティティだけに関係するのではありません。「普通の人」とされるような異性愛者かつシスジェンダーの人たちもまた、SOGIという基準・尺度によって「異性愛」「シスジェンダー」というカテゴリーに入れられているわけです。

つまりSOGIという言葉の大きな意義は、マイノリティだけではなくマジョリティも「当事者」であると強調していることです。

そうやってマイノリティとマジョリティを横に並べて「SOGI基準でグループ分けしただけ」と考えると、一つ大きな疑問が浮かんできます。

「なんでみんな当事者なのに、あの人たち(異性愛かつシスジェンダー)だけ社会に優しくされてんの?」

という疑問です。

つまり、LGBTという「すでにグループ分けされた人たち」の人権や尊厳について(「かわいそう」とか「恵まれない人々」とか「逆境に負けず頑張ってる勇気のあるLGBT」とか「私たちLGBTも普通の市民です」とか言いながら)考えるんじゃなくて、そもそもSOGIという概念が人間の性のあり方を単純に切り分けてカテゴライズし、その中で優劣を付けているという社会的事実を直視して、そんな社会を変えて行こう! という意気込みが、SOGIという言葉からは読み取れます。

人を指す言葉「LGBT」、基準を指す言葉「SOGI」

英語圏で性の多様性について活動している団体などでも、“SOGI people”(SOGIな人々)という風にSOGIを「人を指す言葉」のように使っているところが無いわけではありません。でもそれは一般的ではなく、わざわざ「一般的ではないよ!」と注意を促している団体(PDF)もあるくらいです。

一方日本では、SOGIを「LGBTに代わる言葉」ととらえている人が少なくありません。「チビデブ」って呼ぶのをやめて「身長体重」って呼びましょう、みたいな話が広がりつつあるわけです。「『身長体重』なら『ノッポ』や『ガリ』も含まれるからさ!」って。そして「標準」とされる中肉中背は、相変わらず「普通」の位置に安住し続ける……。

違うんですよ! そうじゃないんです!

「身長体重」って概念を中心に考える理由は、まさにその「中肉中背」ポジションにいる人たちをその「普通」の位置から引き摺り下ろすためなんです!

みんな「身長体重」の当事者でしょ? って。

身長とか体重で人を馬鹿にしたり崇めたりするのはやめない? って。

SOGIもそうです。

「SOGIならパンセクシュアルもデミセクシュアルもジェンダークィアも(中略)含まれるから、LGBTじゃなくてSOGIって呼ぼう!」じゃないんです。

異性愛者かつシスジェンダーの人たちを「普通」の位置から引き摺り下ろすんです!

みんなSOGIの当事者でしょ? って。

性的指向(SO)とか性自認(GI)とかで人を馬鹿にしたり崇めたりするのはやめない? って。

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