新鮮な経験をたくさんさせたい
昨年母親になり、この問題が客観視できなくなった。子供に自由に表現させてあげたい、無理に抑え込んでしまいたくはない。でもそれによって他人に与えてしまう迷惑も気がかり……。となれば、公共の施設に行かなければ早い話なのだが、そうはいかない。
子供を産むまでは、「そもそもこんな“じっとしていられないであろう場所”に連れてくるから親も大変だし、周囲も迷惑になるんだ」と考えていた。
移動手段である電車やバスなどは仕方ないにしても、ファミレスなどは親の都合でムリに連れてこなくても……と考えていたのだが、親になった今となっては、やはり手がかかることはわかっていても色んな場所に子供を連れて行きたいという願望がある。どこかプレイパークへ連れて行ったりすれば、ランチが外食にもなる。入りやすいのはファミレス、といった具合だ。
子供が小さいのは今だけで、子供が見せる表情や成長を様々な場面で見ていたい。家にこもっていれば誰にも迷惑をかけないだろうが、「初めてのもの」「新鮮なもの」を目の当たりにした時の子供の目の輝きようはすごいものだ。
先日、親子三人で大型スーパー内にあるレストランに食事しに行ったが、休日ということもあり人がごった返していて、これは周囲に全く迷惑をかけないなんて不可避だろうというのは最初から分かっていた。
夫と二人がかりで抱っこしたりあやしたり何とか間をつないでいたのだが、子供がこの日初めて“お子さまランチデビュー”をし、カレーとデザートを完食し嬉しそうに拍手(意味はないだろうが)している姿を見たら、たかがこんな事がこの世のものとは思えないほどの喜びで包まれて、その時の私と夫の表情を他人が見たら完全にだたの親バカだっただろう。だから今となっては、小さな子連れの親たちが、いかに手がかかろうとも「色んな所に連れて行きたい」「色んな感動の経験をさせてあげたい」と思う気持ちは理解しているつもりだ。
そのほかにも、こういった飲食店は家で食事を用意する時間がない時など、子供に適量&内容の食事を手早く提供してくれるとても便利な場所であり、ササッと食事を済ませて帰るために利用する人も多いだろう。ただでさえ育児の膨大な仕事量に日々追われている親たち、これが「うるさいから子連れは来るな」という風潮になってしまうと、とっても子育てがしづらくなり、少子化だって深刻化していくんじゃないだろうか。
子連れでの外出を少しでも楽にするために
「どんなに大変でも色んな所に子供を連れて行きたい」「様々な施設を利用したい」こういった心理は、親になった今、よく理解できる。しかし未婚時代に「子供の行動が迷惑」とさんざん考えてきただけに、その想いも頭から片時も離れることはない。
実母や夫からは「気にしすぎだ」と言われることもあるが、やはりあの「不快さ」を他者に与える側でありたくはないし、それに自分の子が可愛いだけに他者から「迷惑な子供だ」と不快な顔を向けられてしまうのも親として何だか本意ではない。
しかし、まだ1歳にもならない息子に、「こういう場ではお行儀よく」なんていうしつけが通用するわけもなく、当然あちこちで泣いたり大声を出したり、実際「うるさいな~」と他者に不快感を与えてしまったことはきっとゼロではないと思う。
これは極端なケースだろうが、「子供を連れている」だけで非難の目を向けられ、嫌な気持ちになったこともあった。エレベーター前でベビーカーに乗った子供と二人で待っていた時のこと。降車する人がいたので十分なスペースを作ったのだが、ドアが開くなり「邪魔だ、通れねえよ」とばかりに迷惑そうな顔でその場に立ち尽くす中年男性がいた。また、夫とスーパーのチャイルドシートに初めて子供を乗せ、ちゃんとつかまって乗れた事の喜びを語り合っていたところ「そういうのやめてもらえます~?」とため息交じりの文句を吐き捨てた中年女性がいた。
私たちや子供が彼らに直接迷惑行為をしたわけではないものの、さも幸福そうに振る舞っている家族の構図だったり、そもそも子連れというだけで気に食わなかったり、はたまた「子供は無条件にかわいいもの」というようなイメージが大嫌いだったりするのかもしれない。あるいはたまたまムシのいどころが悪かったとか。元々やたら心配性なうえ、子供が他者に迷惑をかけてしまうことに敏感になっている私だから、こういう極端な経験である種の警戒モードに拍車がかかってしまっている。
私は「子供そのもの」ではなく「うるさい子供」に嫌悪感を抱いていたわけだが、その心理としてはやはり「堂々とうるさい」そして「それを容認されている」ように見えたからだった。子供の泣き声や奇声などが不快であることはいかなる時も変わらなかったが、その親がそれを必死に制止しようと励んでいるのを見ると、「大変だなぁ」と親に対する労いにも似た気持ちにシフトしていった。
とはいえ、親がどんなに力を尽くそうと、子供の“初期段階”の行動を静止するのはほぼ不可能であり(突発的にあらゆることをし出すのが子供だ)、つまり他者に一切の迷惑をかけないというのも子連れで出かけている以上難しい。それこそ「一切外出しない」とかでない限り不可避だ。
結論から言えば、TPOも何も理解していない子供を連れて出かける際に「一切他者に迷惑をかけない方法」なんてものはないに等しいだろう。しかし、子供の荷物やベビーカーを抱えて子供に常に気を配りながら外出している親たちはただでさえ「身軽」ではない。だからせめて身が縮こまるような思いは少しでも回避したいし、当事者にとってもその他の大人たちに取っても双方がバランスを取れるような方法を追求したいものだ。
じゃあ、どうすれば私たち子連れ親たちと、その他の大人たちの間でWin-Winの関係が築けるのだろう?