山口敬之を告発した女性への誹謗中傷/レイプ報道につきまとう「セカンドレイプ」の歪んだ価値観

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セカンドレイプ

前述のように、山口氏が“安倍総理ベッタリ記者”であること、逮捕状取り消しに上の圧力を感じることから、どうしても本件は政治ゲームの一端として受け止められる向きが強い。それゆえ、安倍政権支持派からは「なんとかして安倍首相を引きずり下ろしたい勢力が、山口氏にハニートラップを仕掛けたのだ」とか、詩織さんの弁護団など周辺関係から「民進党の仕掛けた卑劣な罠だ」と推測する声もある。しかし看過できないのは、詩織さんに対する“セカンドレイプ”発言の数々だ。匿名投稿はおろか、実名・所属を明らかにして書き込んでいるSNSでも、中傷コメントは目立つ。そうしたコメントの主は性別を問わない。

「美人局だろうなと思った」
「駆け出しジャーナリストの売名行為でしょ」
「自己責任です 大人なのですから 同情できません!」
「お互い酔っ払ってセックスしちゃったのを、後になってレイプ!とか騒いでるの?この女。就職の相談とかしてる時点で詩織さんとやらにも下心アリアリじゃん」
「レイプされたって記者会見してた詩織さんはシャツの胸元開け過ぎで説得力ない。お酒飲んで記憶なくして~ってただのビッチじゃん。レイプじゃなくない??メールの内容もオッサン側下心丸出しなのに普通、一緒にお酒飲む???」

冷静に見て、美人局やハニートラップであるという可能性は低いと筆者は考えている。なぜなら実名で姿も隠さず記者会見に臨み、週刊誌に被害を語るのは、本人にとって大きなリスクを伴う。家族や自身のプライバシーが暴かれる可能性があり、今後の生活にも影響が及ぶ。性暴力の被害者は、一連のセカンドレイプコメントを見てもわかるように、この社会ではスティグマを負わされるからだ。

次に、大人の男女が2人で飲食した以上「そうなること」は想定されるのだから自己責任だという意見についても、まったく同意しかねる。女性が男性と2人で会うことを承諾したことが、セックスも承諾したことにはならない。性行為についてイエスと言わない限りは、合意していないのだ。性被害は全て女性側に落ち度があるといわんばかりの意見には、毎度辟易させられる。歪んだ女性観を持つ一部のネットユーザーたちは、被害を受けたとして告発している女性を、男性を誘惑した加害者として扱っているかのようにも見える。「シャツの胸元を開けすぎると説得力がなくなる」という意見も、この社会の歪んだ価値観を投影している。

詩織さんの主張に矛盾があるとしたらその点に疑義を呈することはアリだろう。だが現状、彼女への批判的な言及のほとんどが論理性を欠く誹謗中傷、セカンドレイプに過ぎない。

下心丸出しの男性を、拒絶できなかった女性が悪いのか。相手の明確な合意をとらずに性行為に及ぶことは責められないのか。学生から就職に関する相談を受けながら、あわよくば性行為に持ち込もうと企むのが「普通」の感性なのか。性暴力を「男女の痴情のもつれ」として処理し続けることは、性暴力という犯罪を社会的に容認していることと同じではないのか。政治ゲームはさておき、こうした人権無視のセカンドレイプこそがこの国の大きな病巣のひとつだということに、我々は気付くべきだろう。

(鼻咲ゆうみ)

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