Photo by Paul Robinson from Flickr
2日未明、長野県御代田町のホテルの一室で女性の遺体が見つかり、女性を殺害した上で現金1万円を奪った中国籍の男性が強盗殺人容疑で逮捕される事件がありました。報道によれば、女性の身体には首から足にかけて刃物で切ったり刺したりしたような傷や、殴られたような痕があったといい、逮捕された男性は容疑を認めているとのことです。
殺害された女性は東京都新宿区西新宿に住む21歳のアルバイト従業員で、殺害されたホテルには仕事で訪れていたそうです。入室後に女性からの連絡が途絶えたため、不審に思った知人男性がホテルの従業員と部屋に入ったところ、浴室で血を流している姿を発見されたといいます。
断片的な情報しかありませんが、これらから推測するに、ホテルに派遣されたデリヘル嬢が被害に遭ってしまったという可能性が考えられます。ネット上でも同様の声が上がっていて、風俗系の掲示板では女性が務めていた店舗や源氏名が特定されています。また、彼女はホストクラブに通っていて、売掛（ツケ）を払うため、長野のデリヘル店に出稼ぎしていたと証言する書き込みもあります。いずれも真偽は不明で、本稿でその真相を探るつもりはありません。ただ、こういった事件が起こると、「そんな仕事をしているから殺されるのだ」と被害者が不当に貶められる場面を見聞きすることもなきにしもあらずです。
店舗を持たないデリヘルは、客がいるホテルや自宅に派遣されて性的なサービスを行う業態をとっています。店の管理下にあるとはいえ、店舗型の風俗店と異なり、“スタッフがすぐそこにいない”という状況のため、危険と隣り合わせの職種であることは否めません。しかし、都内のデリヘル店を経て、今はソープで働く20代前半の風俗嬢A子さんは「デリヘルで働いていて、刃物が出てきたり、殺されかけたりしたことはありません」としつつ、「今回の事件をきっかけに、改めて“風俗という仕事は危険と隣り合わせである”と再認識する風俗嬢は多いように感じています。日常的に働いていると忘れがちなのですが、“いつ何が起こるかわからない”のは確か」と話します。
“いつ何が起こるかわからない”のは確か
「デリヘルの場合、客がいるホテルや自宅に到着したらまず店に電話をします（インコール）。そして、仕事が終わった時にも終了を報告する電話をかけるのですが（アウトコール）、今回の事件はアウトコールがなく、不審に思ったスタッフがホテルの部屋に突撃して発覚したのではないかなと」（A子さん）
いつ何が起こるかわからないというのは、店舗型の風俗でも同様なのでしょうか。
「私はデリヘルで働いていて、刃物が出てきたり、殺されかけたりしたことはありませんでしたが、箱（店舗型）の店とは違ってスタッフの監視から離れているせいか、本番（セックス）を強要してくる客は箱の店より多い印象を受けました。しかもそういう客に限ってコンドームを用意していなかったりします。あと、基本デリヘルは1対1で接客しますが、クローゼットなどに他の男性が隠れていて、インコールが終わった途端に出てきて、輪姦されそうになったっていうケースも聞いたことがあります。少数のケースだとは思うんですが……」
そもそもデリヘルは膣への陰茎挿入は絶対禁止事項です。そういう客は、風俗嬢が、あくまで定められたサービスを行うための労働者としてその場に派遣されてきているということを、理解していないのかもしれません。
「私は本番強要してくる客や汚すぎる客の部屋に行くことがストレスすぎて、デリヘルは辞めて、今は箱の店で働いています。でも、今回の事件をきっかけに、改めて“風俗という仕事は危険と隣り合わせである”と再認識する風俗嬢は多いように感じています。日常的に働いていると忘れがちなのですが、“いつ何が起こるかわからない”のは確かで。ただ、『殺されるかもしれない』と怯えながら働いている風俗嬢なんて、それまでほとんどいなかったと思います。そんな緊張感に日常的にさらされながら働くことなんて、誰も出来ないですよね」
風俗嬢が労働中に被害に遭った殺人事件は、デリヘルだけに限らず、過去には吉原のソープ店でも発生していて、箱の店でも100％安全が保証されているワケではありません。どんな仕事でも業務中に事故に遭う可能性はゼロではないといえ、接客対象から加害される心配を常に意識しながら働くことは神経をすり減らします。現時点では、今回のような事件を防止する有効策は立てられていません。「だからセックスワークなんてやるもんじゃない」ではなく、安全にセックスワーカーとして働くことのできる環境を整えていく必要があります。
