聞き上手のコツは、真剣に話を聞かないこと/利重剛×枡野浩一【2】

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枡野 この利重さんの本に書かれた言葉を読み上げながら、考えていってもいいですか。

利重 はい。

「いるよね、“俺は笑いにうるさい”って人」(利重)

枡野 (利重さんの本の言葉は)全部面白いんですけど、次にピンときたのが、これ、「なるほど!」と。

  <聞き上手の人は、けっこう話を聞いていない。
   きっとそこに、コツがあるのだろう。>p.26

確かに僕のまわりの聞き上手の人はけっこう話を聞いていない! と思いました。

利重 そうですよねえ(笑)。

枡野 でもそれを否定的に言うんじゃなく、≪きっとそこにコツがあるのだろう≫って……プラスに捉えている感じがします。

利重 そのコツがね、自分でもつかめないんですけど、必ずコツがあるはずなんですよ。

枡野 ですよね? (だから聞き上手の人は)ちゃんと聞いてくれている気がするんですよね。

利重 そうして自分も気分よく話していて、でもあるとき、「あっ、こいつ聞いてねえな!?」って思うんだけど(笑)。でもなかなかそれに気づけない。

枡野 僕も新宿2丁目に10年間くらい通ってるんですけど、そこで唯一友達になった人がすごく聞き上手なんですよ。でもつい最近彼から、「や、あまり話、聞いてないんだよね」って言われたことがあって。

利重 ふふふふ(笑)。

枡野 それで第三者の人にその彼を「この人、ずっと仲のいい友達なんです」って紹介したら、その第三者の人に彼は「枡野さんが話す話、あんまりちゃんと聞いてないんだよね」って言ったんです、僕のいるところで。「なんでずっと仲が続いたかっていうと、ちゃんと話を聞いてないからだよ」って。

利重 くくくく(笑)、それを第三者を通じて知らされたわけね(笑)。

枡野 仲が続いたのはそういうことかと。ちゃんと僕の話を聞いてくれる人とは仲が続かないのかと。そこに何か、世界の秘密を見る気がしました。

利重 なるほどねえ(笑)。

枡野 次に行きますね。

 <「俺はちょっと笑いにはうるさいよ」
   とか言う人よくいるけど、
  「笑いにうるさい人」
  って、あらたまって言ってみて。
  なんか、恥ずかしくない?>p.34

このフレーズが、すごく僕、好きで。僕はお笑いやってたから。お笑いやってたのも、お笑いを語るだけの人が好きじゃなくて、「あなたは偉いの?」って思っちゃうんですよ。「やってごらんよ!」っていう気持ちでいたから……。

利重 はいはい。

枡野 それに、確かに≪笑いにうるさい人≫っていうと、おかしいですよね。

利重 ねえ。でも、いるよね、「いや、俺はちょっと笑いにはうるさいよ!」って人(笑)。こいつ、なに言ってんだろうって。うるさいって。面白ければ笑えばいいだけだし、面白くなければ「なに言ってんの?」って言えばいいのに、「俺はうるさい」ってさ。ほんと、わざわざ言ってる人を見ると赤面してしまいますね。

枡野 この文章のポイントは、≪「笑いにうるさい人」って、あらたまって言ってみて。≫っていう、このフレーズですよ。

利重 そう、口に出して言ってみてくれと。

枡野 それがないと、“俺はちょっと笑いにはうるさいよっていう人いるけどおかしくない?“みたいな、ただの嫌な文章になっちゃうと思うんですよ。真ん中に挟まってる≪笑いにうるさい人って口に出して言ってみて≫っていうところで、「笑いにうるさい人……ぷぷぷ、恥ずかし~!」って思うわけですよ。

会場 (笑)

枡野 それがほんとよかったですねえ。グッときました。

利重 ありがとうございます。

枡野 次のフレーズがですねえ――

 <子供にかぎらず、人間のいちばん可愛い仕草は、
  手をつなぐ瞬間だと思う。>p.59

利重 はい。

枡野 僕、最近になって、街を歩いてる人って意外と手をつないでるなって気づいたんですよ。カップルが。自分が結婚中とかもあまり手をつながなかったんですね。手をつなぐのが嫌だったわけではないんですけど、「みんな手をつないでるなぁ」って今頃気づいて、なんか手をつなぐのって可愛いなと思って……可愛いですよね、手をつなぐのは。

利重 可愛いですよねえ。

枡野 どんな人でもね。

利重 おじいちゃんおばあちゃんでも、カップルでも、可愛いと思いますね。子どもに限らずですね。すごいパンキッシュな2人が手をつないでいても、「あぁ手ぇつないでんなぁ」と……。

枡野 思いますよねえ。そういう、言われてみればそうだけどわざわざ言葉にしないもの、なんですよ。

利重 だから僕はわざわざ言葉にしてるってことですね(笑)。

枡野 そこもすごく良かったです。

 

【第2回の注釈】

■町田町蔵
パンク歌手であり俳優であり芥川賞作家である町田康の以前の「芸名」。町田町蔵としてはパンクバンド『INU』でのボーカルや、映画『爆裂都市』でのキチガイ弟役が有名。80年代インディーズ・バンドブームにおける「パンク顔」の象徴でもあった。

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■利重剛さん
りじゅう・ごう。1962年生まれ。俳優・映画監督・エッセイスト。
1981年、自主製作映画『教訓I』が、ぴあフィルムフェスティバルに入選。
同年、『近頃なぜかチャールストン』のプロットを日本映画界の巨匠・岡本喜八監督に持ち込み、喜八プロ作品として映画化され、「独立非行少年」役で主演を果し、共同脚本・助監督をも務める。共演者は財津一郎・小沢栄太郎・田中邦衛・殿山泰司・岸田森・平田昭彦などのベテラン名優たちだった。さらに同年、テレビドラマ『父母の誤算』で新しいタイプの不良少年を演じ、鮮烈なテレビデビューを飾り、以後、数々のドラマ・映画に出演する。
1989年、『ZAZIE』で監督に進出し、1996年『BeRLiN』では日本映画監督協会新人賞を受賞。2001年『クロエ』はベルリン映画祭に出品もされた。他の監督作品に1994年『エレファント・ソング』、2013年『さよならドビュッシー』などがある。
エッセイ集に『街の声を聴きに』(日本文芸大賞受賞)、『利重人格』があり、最新作は『ブロッコリーが好きだ。』

利重剛ウェブ・サイト『利重人格』

(構成:藤井良樹)

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