「美術館には“おじさん”好きな知的女子や不思議ちゃん系女子が訪れていることが多いので、特に狙い目です」
岸田一郎・『GG』編集長(『週刊ポスト』2017年6月16日号)
オジ様たちは、「女ってのは、すぐその気になるもんなんだよ」と上段から構え続ける。既に方々で言及されているようなので改めて持ち出すのも新雑誌の宣伝に加担している気すらしてくるのでイヤなのだが、「ちょいワルオヤジ」のキャッチコピーで雑誌『LEON』を流行らせた編集者の岸田一郎が雑誌『GG』を今月末に創刊、『週刊ポスト』でその雑誌の指針を語っている。
創刊号の特集は「きっかけは美術館」。岸田いわく、熱心に鑑賞している女性がいたら蘊蓄を語るべし、「美術館には“おじさん”好きな知的女子や不思議ちゃん系女子が訪れていることが多いので、特に狙い目です」と言う。本当だろうか、と思案するまでもなく「あっ、そんな人いないです」が唯一の正答ということになるだろうが、岸田は続けて、こういった女性と夕食に行く事になったら、例えば料亭で出てくる「鮎の塩焼き」の食べ方を伝授すべきだという。そうすると、「粋な作法は経験していないとわからないから、教えてあげると若い女性は感心するわけです」とのこと。もう一度、皆さんと唱和したい。準備はよろしいですか。「そんな人いないです」。ご唱和ありがとうございます。
オヤジ雑誌には「こうすれば女はその気になる」という考察が充満していて、毎号のようにそういったアプローチが繰り返されているってことは、女の人はちっともその気になってくれていない、と疑いを持たないのだろうか、いい大人なんだし、とは思うのだけれど、はっきり言って雑誌を作る側は、実際にその気になるはずがないことなんて百も承知。読者の「あわよくば感情」を継続・拡大させるのが読者の確保に繋がると踏んでいるのだろう。こういったメンタリティを増強する風土が岸田氏をはじめとした中高年男性向け雑誌の編集者やオジ様への女口説き指南をする業界人たちのなかですっかり常態化し、美術館ナンパ云々の度合では済まない具体的な事案に発展してもなお、女性の「その気」を理由にしたがる。それは、自分たちが定期的に「あわよくば感情」を待望してきた弊害とも言えるのではないのか。