就学前教育の就学率95%の日本で、幼児教育の無償化は本当に必要?

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日本の幼児教育の先生たちは力を発揮しやすいわけではない

先生が力を発揮しやすい環境にあるかどうかは、労働時間や同僚・保護者との関係など色々な要因で決まりますが、中でも特に教育の質を左右するものとして、教員一人当たりの生徒数を挙げることが出来ます。

一般的に教員一人当たり生徒数は、子供の年齢が下がるほどその重要性を増してきます。大教室で授業が実施される予備校の授業を受けるために年間100万円も支払うことに躊躇しない人でも、同じ規模の幼稚園・保育園があったら、たとえ値段がその半額だとしても、危なっかしくて子供を預ける気になれないでしょう。では、日本の幼児教育の先生たちが受け持つ子供の数は、他の先進諸国と比べてどのようになっているでしょうか?

図1: 就学前教育・教員一人当たり生徒数 ※クリックで拡大

図1: 就学前教育・教員一人当たり生徒数
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上の図が示すように、日本の就学前教育の先生は一人当たり平均約26人の児童を受け持っています。この数字は、先進諸国の中で2番目に大きい値を示しているフランスよりも約30%も多く、先進諸国の中では群を抜いて高い値となっています。このような状況では、幼児教育の先生たちがその力を発揮することも難しく、ヘックマン教授が分析したように幼児教育が高い効果を発揮できるほど質が高い状況にあるとは言い難い所があります。

日本の幼児教育の先生たちの資質について

日本の待機児童問題が解消されない理由の一つに、幼児教育の先生の給与が低く離職率が高いため、なり手が集まらないという事情があります。日本の幼児教育の先生の給与は確かに一般的に低いのですが、他のいくつかの先進諸国では、幼児教育の先生の給与は小学校以降の先生の給与とほぼ同額に設定されています。脳の発達を始めとする幼児教育段階の子供の早期は非常に複雑なうえに日進月歩で新たな発見がなされており、その発見にキャッチアップしていき、それを日々の教育実践に反映させられるような資質を持つ幼児教育の先生と、小学校以降の先生に求められる資質に違いがある方がおかしいわけで、それであれば待遇も同等であるべきだからです。

図2: 教育段階別、教員の準備教育の水準 ※クリックで拡大

図2: 教育段階別、教員の準備教育の水準
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図3: 教育段階別、教員の勤務年数 ※クリックで拡大

図3: 教育段階別、教員の勤務年数
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しかし、上の図が示すように、日本では幼児教育の先生とそれ以降の教育段階の先生との間で準備教育の水準に大きな開きが見られます。そして、給与水準が低いのと鶏と卵のような関係ですが、平均勤務年数にも大きな隔たりが見られます。

幼児教育段階の子供の発達の複雑さなどを考えれば、幼児教育の先生とそれ以降の教育段階の先生とでこれだけ資質に差がある状況では、ヘックマン教授が分析したような高い効果を発揮できるほど幼児教育の質が高い状況にあるとは言えないのではないでしょうか。そうした中で幼児教育を無償化することで、コストに見合うリターンを得ることができるのでしょうか。

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