社会

「ポカリスエットゼリー」CMの「L/R」発音は、在米日本人のトラウマを掻きむしる

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発音できない → 死活問題

 このように英語の発音があまりにも通じないと差別や侮辱の対象になり得るわけだが、もちろん実生活にも支障が出る。基本的な単語も発せられない、つまり他者とのコミュニケーションが取れない外国人を、企業や店舗は果たして雇うだろうか。

 ニューヨークには誇張ではなく世界中からの移民が押し寄せている。毎日まったく精度(正確さ)の異なる英語と、まったく異なる発音に出逢う。皆それなりに仕事をし、生きている。しかし、そこにはルールがある。

・全く、またはほとんど英語が話せない者は自身のエスニック・コミュニティ内で母語のみによる仕事をする。または多人種地区であっても英語話者との会話が不要な単純作業に就く。どちらもおしなべて賃金は低い
・成人後に渡米すると英語の上達、特に発音の矯正に上限があり、生まれつきの英語話者(ネイティブ・スピーカー)と同じになることはほぼ不可能。しかし母語特有の訛り(アクセント)を残したまま、「通じる発音」を身に付け、英語話者と問題なく仕事をする

 そもそもネイティブ・スピーカーの発音も様々だ。英語使用国はアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどだけではない。ジャマイカなどカリブ海諸国も多くは英語を使うし、ヨーロッパ各国にも英語話者は多い。アフリカにもケニアを始め、国民の15%以上が英語を話す国がいくつもある。アジアならシンガポールやインドネシアに英語話者の率が高い。アメリカにインド人エンジニア、フィリピン人看護師が多いのは、両国ともに(全国民対象ではないにせよ)英語教育が徹底されているからだ。こうした人々が世界中から集い、お互いに異なるアクセントの英語で意思の疎通を行い、仕事や勉強、そして恋愛も含む日常生活を送っているのがアメリカなのだ。

Do you speak English?

 翻ってみると、上記の各国にはそれぞれある割合の英語話者がおり、母国にいながら英語を介して他国人との交流、または他国とのビジネスを築いている。学生なら英語でのリサーチ、論文執筆も可能だ。世界は今、英語によってコミュニケーションが取られていることは否定できない事実。だからこそ日本でも低学年での英語教育が始まっているのだろう。「英語より日本語をしっかり」「他の言語も」の意見はここではおくとして、低年齢から英語を学ばせるのであれば、日常に英語環境がなければ上達は難しい。日本で英語環境を作ることこそ難しい課題なのだが、であればせめてメディアに流通する英語は正しいものにするべきではないか。そうでなければ永遠に「Herro!」のままだ。

 アジア系の発音の弱さは「アジア系は英語が話せない」という偏見にもつながっている。ある在米の日本人女性 @alohamodeはツイッターにて「おもろうて、やがて哀しき」エピソードを披露してくれた。ショッピングモールの駐車場で見知らぬ人に「英語は話せるか?」と聞かれ、「イエス」と答えたところ、相手の次のセリフはなんと「ガソリン代が無いから金をめぐんでくれ」であったと。

 路上生活者であっても「アジア系は英語が話せない、それじゃ商売にならない」と判断する。これがアメリカ社会のリアリティなのである。

追記:体験談を提供してくださったツイッター・フォロワーの皆様、どうもありがとうございます。お互い外国でがんばって生きていきましょう!
(堂本かおる)

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