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社会を“男の絆”で占有する強固なロジック 「ホモソーシャル」の正体とは?

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下駄を履かせてもらっていることに無自覚な男性たち

清田 女性が社会から排除される仕組みというのは、ホモソーシャルとどう関係しているのでしょうか。

前川 政治家や企業の管理職に女性が圧倒的に少ないという状況が如実に示していますが、この社会には「公的な空間を担うのは男で、女の領域は家庭」という考えがまだまだ根強い。これは社会を「男の絆」で占有するべく、長い時間をかけて構築されてきた強固なロジックなんです。女性を一緒に社会を担う一員だと思ってないから、会社でセクハラをしたり、お茶くみや掃除といった“家庭的”な仕事を押しつけたりするわけです。

清田 「お茶は女性が淹れたほうがうまい」とか、「掃除は女性のほうが得意だから」とか、そういう謎の理屈を振りかざす人もいたりしますよね。

前川 例えば女性社員が結婚して会社を辞めることを「寿退社」なんて言いますが、その根底には「女性の本当の居場所は会社じゃなくて家庭」という考えがある。だからこれは一種の排除なんですよ。

清田 男性は「結婚したら会社を辞めなきゃいけないのかな?」なんて発想すらしないし、寿退社という概念もない。

前川 「女性の居場所は家庭の中にあって、職場は男性だけで回したほうが効率的だしやりやすい」と考えている男性は本当に多いし、日本型のハードワークはこの考えをベースにできあがってるわけです。例えばメディアなんかその最たるもので、新聞などは保守だろうがリベラルだろうが、新聞社である以上、夜討ち朝駆けが必要になってくる。その働き方って、家に専業主婦の人がいることが前提とされているんですよ。働きながら家事も子育てもできるシステムにはなっていない。これは新聞社に限らず、日本の社会全体に当てはまる問題です。

清田 ホモソーシャルは社会構造ともガッチリ結びついている、と……。

前川 だから男性はまず、自分たちが下駄を履かせてもらっていることを自覚するべきなんですよ。女性管理職比率の向上に取り組むカルビーの伊藤秀二社長は「女性が4割いるなら管理職も4割いるのが当たり前。女性に下駄を履かせているとの批判があるが、もともと下駄を履いていた男性に脱いでもらっただけ」と発言していましたが(『朝日新聞』2016103日)、本当にその通りだなと。下駄を脱ぐのは勇気の要ることだけど、そのほうが平等で持続可能な社会になるわけで、さっさと脱いだほうがいい。

清田 でも、現実には「下駄を履いてるのは一部の勝ち組だけで、俺たちはむしろ損ばかりしている被害者だ」って思ってる男性もかなり多いように感じます。

前川 そうなんですよね。バカバカしいなって思うのは、日本は非常に女性優位な社会だと思ってる男性が相当数いるわけですよ。「差別されてるのはむしろ俺たちのほうだ!」って。よく持ち出されるのは映画館のレディースデーと女性専用車両の話ですよね。じゃ、わかったと。メンズデーも男性専用車両も作りましょう。その代わり給料は逆にしてもいいですか? 就職倍率も逆になったらどうなりますか? ってなったら焦り出すはずなのに、そこに想像が及ばない。それは結局、自分が男性であることで得をしているっていう意識がないからなんですよね。

清田 ただ、「自分は男だけど賃金低いしブラック勤めで苦しんでいる」という男性には、男性であることによる“得”が理解できず、「専業主婦という道が用意されている(かのように見える)女性」は優遇されているように見えてしまうのかもしれません。そう考えるとホモソーシャルって、勝ち組男性たちが生きやすいシステムを維持していくための壮大な“利権団体”のように思えてきました。男の絆って、その利益を享受する者同士の談合みたいなものなのかも……。

<後編につづく>

▼後編
日本は巨大な男子校!? なぜ“ヘテロ男性”だけが正常とされているのか

後編も引き続きよろしくお願いします!

後編では「ヘテロ男性」という存在に迫ります

■今回の先生■

前川直哉(まえかわ・なおや)
1977年兵庫県生まれ。東京大学教育学部卒業後、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程単位取得退学。灘高等学校教諭を経て、現在は東京大学大学院経済学研究科の特任研究員、および一般社団法人「ふくしま学びのネットワーク」理事・事務局長を務める。共著に『「育つ・学ぶ」の社会史――「自叙伝」から』(藤原書店)、著書に『男の絆─明治の学生からボーイズ・ラブまで』(筑摩書房)、『〈男性同性愛者〉の社会史――アイデンティティの受容/クローゼットへの解放』(作品社)がある。http://www.geocities.jp/maekawa_00/

男の絆─明治の学生からボーイズ・ラブまで

『男の絆─明治の学生からボーイズ・ラブまで』(筑摩書房)

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