兵士・警官・ジャーナリスト~女性の社会進出と高まるリスクのバランス

文=堂本かおる
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女性の消防士と米軍兵士

 FDNY(ニューヨーク消防庁)には現在、アジア系の女性消防士がひとりだけいる。タイ系アメリカ人のサリニャ・スリサクル隊員だ。消防歴12年の彼女も含め、約10,000人いる消防士のうち、女性はわずか63人に過ぎない。

 FDNYは10年前に雇用における人種差別で訴訟を起こされている。当時は全消防士のなんと9割以上が白人であり、人種的マイノリティの消防士団体が訴えを起こし、勝訴した。裁判の結果、FDNYはマイノリティ消防士のリクルート活動を命じられ、以後、盛んにキャンペーンをおこなっている。その際の「マイノリティ」には女性も含まれており、FDNYのリクルート・ポスターには黒人、ヒスパニック、アジア系、そして女性が登場する。そうした努力が実を結び、現在は消防士の4分の1をマイノリティが占めるまでになった。

 ただし消防士は警官以上に体力が必要な職業であり、かつ配属署では男性に囲まれ、唯一の女性署員となる。そうした理由から増えたマイノリティの多くは女性ではなく、人種的マイノリティだ。とはいえ今年は消防士試験の申し込み者51,000人のうち、1割以上にあたる5,400人が女性だった。最終的な雇用者数は少なく、男性にとっても狭き門だが、今後は女性消防士も徐々に増えていくものと思われる。

ニューヨーク消防庁の消防士募集ポスター(FDNYより)

ニューヨーク消防庁の消防士募集ポスター(FDNYより)

 米軍は現役勤務兵の15%にあたる約20万人が女性だが、以前は女性兵士は戦闘に参加できなかった。しかし軍規が変わり、2016年より女性も前線で戦車を操縦し、マシンガンを発射するなど激しい戦闘に加われることとなった。つまり戦争映画で観るような光景に女性兵士が加わるのである。ただし全女性兵士が戦闘に配属されるわけではない。これも相応の体力が必要な任務のため、本人が志願し、かつ選び抜かれた者だけとなる(※アフガン戦争/イラク戦争でも女性兵士の犠牲者は出ており、全犠牲者6、757人のうち、 160人を占める)

 軍規変更の発表があったのは前回の大統領選が盛り上がっていた時期であり、ヒラリー・クリントン候補(当時)はこの変更を、「戦闘参加能力ある女性」のために賛同するコメントを発している。アメリカ合衆国大統領は、米軍の最高司令官の地位も兼任するのだ。

 なお、英語では警官はかつては「ポリスマン」、消防士は「ファイヤーマン」と呼ばれたが、現在は女性を含めて「ポリスオフィサー」「ファイヤーファイター」と呼ぶ。兵士は以前より性別のない「ソルジャー」「ミリタリーパーソネル」が一般的に使われている。

ニュース専門局の女性キャスター

 アメリカでCNNを筆頭に各局のニュース番組を観ると、女性のキャスターやコメンテイターが多いことに気付く。

  MSNBCはCNNと同じくニュース番組だけを24時間オンエアするケーブル局だ。前回の「トランプ『女性キャスター「知能が低く」「クレイジー」「整形手術で出血」』ツイートに寄せられた二種類の批判」に登場したミカ・ブレジンスキーの「モーニング・ジョー」は朝3時間の番組で男女2人のキャスターを持つが、他の番組は1時間または2時間で、それぞれを異なるキャスターが単独で担当する。数えてみると平日は1日に15番組あり、うち男女キャスター1番組、男性キャスター6番組、女性キャスター5番組、特定のキャスターを持たない3番組となっている。

 番組はキャスターの個性と実力で視聴率を稼ぐ。人気の上がらないキャスターはすぐに降板となる厳しい世界だ。キャスターはプロデューサーと共に番組で取り上げる時事社会問題を選び、分析し、政界、経済界の大物ゲストに対面インタビューでどんどん切り込んで行く。都合の悪い質問に答えたがらないゲストをぐうの音も出ないほどに追い詰めることもある。

 CNNもMSNBCも複数のコメンテイター(有識者)を招いて短時間の討論形式とすることも多い。時には党派や主張の異なるコメンテイター4~5人が全員女性のこともあり、互いに激しく議論する。

 大統領となった今も女性蔑視発言が続くトランプだが、昨年の大統領選時のキャンペーンPR担当には女性を抜擢していた。戦況が苦しくなると首のすげ替えをおこなったが、新たに雇用されたのも、やはり女性だった。番組キャスターからの質問に対する彼女たちの応答には問題点も多かったが、とにもかくにも相手に口を挟ませないスピードで喋りに喋るスキルは持っていた。

 ヒラリー・クリントン候補が最も信頼するスタッフも女性だった。メディアに出ることはなかったが、ヒラリーの全てを知り尽くし、選挙戦の策を練り、日々のプランを立て、実行に移し、どこにでも同行する実力派だった。

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