ライフ

「転ばないため」ではなく、「安心して転ぶため」に――トミヤマユキコ×清田隆之『大学1年生の歩き方』

【この記事のキーワード】

大学教授が全然分かっていない「ハラスメントの条件」って?

――大学生活の中では、恋愛だけではなく、教員によるセクシュアル・ハラスメントなども問題になってきますよね。なぜ学内でのセクハラが後をたたないのでしょうか。

トミヤマ 大学教員のほとんどが「何がセクハラか」ということを分かっていないんですよね。みんな「感じ方の違いだ」って思いたがっているというか。自分は冗談のつもりで言ったことなのに、学生が過剰反応してハラスメントだと騒いでいる、と。でもね、そもそも大学空間に性的なことを持ち込んだ時点でそれはハラスメントなんですよ! 被害を受ける側もそう思っておいてほしいですね、大学空間に性的なことを持ち込まれたら、即座にイヤだと言っていいんだって。

清田 これは男性にとって耳の痛い話だと思います。というのも、大多数の男性は「性的な意思を持って迫ってなければセクハラじゃない」という感覚で、おそらく本人にセクハラをしているという意識はない。でも、自分に評価を下す存在である教員は、学生にとってある種の“権力者”なわけだよね。その権力勾配を自覚しないまま「かわいいね」「ご飯行こうよ」みたいな発言をしていると、先生としては生徒としてかわいがっているつもりでも、学生の方は「これを断ったら学校にいられなくなるかもしれない」という発想が出てくる可能性がある。自覚のないままセクハラしちゃう教員って、そこを分かってないと思うんだよね……。

パワハラにもアカハラにも言えることだけど、強くて偉い側にいる人が、自分の持っている権力に無自覚なまま、自分では普通だと思っていることをしちゃって、それによって起こる問題すべてがハラスメントになり得る。それをまったく分かっていない先生は、「俺は相手に触っていないし、勃起もしていない」「相手が自意識過剰なだけだ」とか言っちゃう。

トミヤマ こと恋愛のことになると、教員と学生は対等だと思ってしまうんでしょうね。俺は普通にお前のことが好きになっただけで、お前にも断る権利があったはずだ、と。しかし、当たり前ですけど、教員と学生の間にはものすごい権力差があるわけで。

どうしたって学生は、「先生は強い」と思い込みすぎてしまうんですよね。もちろん研究者としての部分はどれだけリスペクトしてもいいんですけど、セクハラやパワハラをされたときには、その人を一人の人間として見てほしいんです。そうやって見たときに「この人のやってることはダメでしょ」って思ったら、怒っていいんですよ。

「指導してくださるので」とか「これくらいのことは我慢しなくちゃいけないのではないか」みたいに、自分を責める方向で考える学生がいますし、みんな「事を荒立てたくない」って言いますけど、事を荒立てたくないのは教員も一緒なんですよね。むしろ、仕事とか名声とか、ハラスメントをしたことによって失うものが多いのは教員の方です。きっと学生の立場からはそうは見えないだろうし、私も昔はそういう構図が見えておらず、うっかりセクハラ案件に巻き込まれたりしてましたけど、実際は、学生の方が失うものも少ないし、立ち直るための時間もある。実際に教員をハラスメントで訴えるかどうかは個人の自由ですけど、もっと気持ちを強く持ってくれ、とは言いたいですね。

後編へ続きます>

___

トミヤマユキコ
1979年生まれ。秋田県出身。ライター/早稲田大学文化構想学部助教。『図書新聞』『タバブックス』『文學界』などで執筆中。著書に『パンケーキ・ノート』(リトルモア)がある。

清田代表/桃山商事
1980年生まれ。東京都出身。恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表。失恋ホストやコラム執筆などを通じ、恋愛とジェンダーの問題について考えている。桃山商事の新刊『生き抜くための恋愛相談』(イースト・プレス)が9月に発売予定。

1 2 3

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。