
(C)messy
先日、息子を連れて地元の児童館に行ってきた。
ちょうど七夕の催しを行っていたので、ちょっとずつ夢中になれるものが増えてきた息子に「いつもと違う」ものをたくさん見せてやりたかったのだ。
児童館……自分が子供のころにはほとんど行ったことがないし、ここ数年間カネと欲にまみれたパチンコ屋での勤めを長くしてきた私に取ってはまるで酸素すら違う異次元の空間だ。
まっさらな子供たちが遊び、学び、伸び伸びと成長するために、行政が認可している施設。
その響きだけで何だか「親として正しい姿」でなければならない! という、わけのわからない先入観に見舞われ、私はのっけからいつもより規律正しくというか品よく振舞っていた。
七夕の催しと言っても、児童館を利用できる年齢の子供たちが全て一緒に参加するわけではない。
私たち親子が参加したのは0歳児(今年の4月の時点で0歳だった子供)クラスで、広いホールにはズラッと親子が四方に広がって座っている。
40人ぐらいはいただろうか。見渡す限りでは歩けるくらい大きいのは私の息子(1歳1カ月)くらいなもんで、皆お母さんに抱かれてる小さな赤ちゃんばかりだ。
あらゆる方向から飛び交う赤子の声と、お母さんたちの「優しい声」で場は包まれている。
久々のその空気感に戸惑っている中、催しがスタート。
言葉も何も分からない月齢の子供相手に、一体どんな催しをするというのだろう?
まずは、ムードメーカー的な女性職員が元気いっぱいにマイクであいさつ。
そして「七夕っていうのはね~」と、赤子たちに向け、七夕の由来をストーリー仕立てにして語りかけ始める。
もちろんここにいる赤子たちに(息子も含め)理解などできるわけはないのだが、この語りかけが「ちゃちゃっと七夕っぽいことしとけばいい」的な投げやりな感じがなく、好感が持てた。
次に、別の女性職員が織姫に扮して登場。「彦星様はどこかしら~。皆で彦星様を呼んでみましょう~!」と、完全に彦星出落ちフラグ全開。
皆で(と言ってもお母さんたちだけで)彦星を呼ぶと、やはり。「彦星」と書かれたタンクトップを身にまとい、今流行の芸人のネタ「いえーーい!」ってやつで登場。
母親たちは爆笑。半分くらいの赤子は号泣。
「うわぁ~ん!!」とあちこちから聞こえる泣き声にも動じず、「うんうん、だよね~。予想してたけどね~!」と物腰柔らかく続ける、彦星役の体育会系男性職員。
その後も、お母さん的な小太りの中年女性職員が牛の役をやったりオルガンを引いたりなど華麗に立ち回り、手作り芝居ゆえグダグダになる局面も、マイク役の女性がアドリブで面白おかしくしてしまう。
最後はライトを消し、壁一面に描かれた天の川のシールがブラックライトで照らされる。そして皆で七夕の歌を合唱。
演劇が終わるころには、職員たちのプロ根性と、手作りの不完全な衣装・小道具・演出が何だか温かくて感動してしまった。
そうか、これは「赤子に向けて」の催しなのではなく、“子供”のイベントにこうして参加できる、母になった喜びを感じるためのイベントなのかもしれない。と深読みしてみた。
演劇が終わると、七夕制作。
笹に飾る短冊やら人形やらを作るため、母親たちは赤子をサイドに寝かせ、予め模られた厚紙やらの素材で皆懸命に取り組む。
短冊には「子供目線」の願い事を書くのだろうと思っていた私は、「もっとあんよが上手になりたい」とか書いてみたが、周りを見渡すと「家内安全」とか「〇〇(子供の名前)が健やかに育ちますように」とか親目線での願いが描かれていて、ちょっと恥ずかしい思いをした。