子を介せばどんな人とも仲良くなれる……⁉︎
そんなこんなで、何度かスッテンと転ばせられたりしながら、息子が行く先を追って移動。
たくさん子供が集まっているところに入っていきオモチャで遊び始めると、私も必然とその周りに居る「ママの輪」に入らざるをえない。
もちろんいきなり会話に参加するとかではないけれど、「新参者」の幼子が入ってくれば皆暖かい笑顔で「ニコニコだね~!」「あんよ上手だねぇ~!」と迎えてくれるから、私も「どうも~」的な感じになる。
そこで腰を降ろせば「今何カ月ですか?」と尋ねられたり、ちょっとした会話になる。
そんなことをあちこちで何度も何度も繰り返し体験していたら、私もその空気感に慣れてきてしまった。
1時間が経過し次々と皆帰っていく。さっき親しく会話したお母さんとその子供も帰ってしまい、2時間が経過した頃には周りには私達親子だけになってしまった。
息子は頑なに帰ろうとしない。強引に抱き上げようものならこの世の終わりかの如く泣きわめくので、この際、好きにさせておいた。
少し離れた位置には、さっきの“イケてる”グループのお母さんたちがまだ盛り上がっていて、子供たちはお母さんの側でお昼寝していた。
息子はハイハイが物凄く速い。シャカシャカシャカ……!!! とまるでマンガのような動きをする。広くなったホールで気持ちよかったのか息子は自由気ままにハイハイでホールを縦断。
すると“イケてる”グループのお母さんたちがこちらを大注目。
あわわ、怖い。昔いじめられっこだった私は、「集団」に見つめられるのが未だに苦手だ。それも“強い”系のグループ。
しかし途端に皆優しい笑顔になり、「うわぁ~!!はや~~い!!」「すご~~い!!」と口々に言う。褒められてるのがわかった息子は、得意げになって今度は「あんよ」を披露。
そのお母さんたちのほうを見ながらスピードを出そうとするので、歩行が酔っぱらいみたいになり、それがまた「わ~~!上手~~!!」と妙にウケている。
注目が苦手な私なのに、こういったことを投げかけられれば「返答」に困ってしまう私なのに、なぜかとても嬉しい。
息子が社会に認められた瞬間かのようで、何ともいえない喜びで満ちてきた。
それだけで、いつの間にかそのグループに対するイメージ(勝手なものだが)が一変してしまった。
それから数十分後、一組の親子がホールに入ってきた。
手には入館手続きに必要な書類などがあったので、今日初めて来た親子らしいということはすぐわかった。
お母さんと子供(男の子)はホールの隅に座り、おもちゃで遊び始めたが、息子は新しい友達がやってきたのですぐにそちらへ寄っていく。
「今日、初めて来たんですか?」
無意識に話しかけていた。自分でもびっくりだ。
いつもは近所の公園に行っているが、そこが飽きてしまったので少し家から離れたこの児童館に来てみた、というようなことを言っていた。
お母さんはあまり積極的にコミュニケーションを取ることが得意ではなさそうなタイプだった。私もどっこいどっこいだとは思うが、この数時間ですっかり「児童館」という空気に鍛えられてしまった私は、
きっとそのお母さんから見て「積極的なお母さんだな」と見えただろう。
また偶然にも、誕生日が息子と1週間違いの男の子。割とムスーッとしていたが、ふとした時に見せる笑顔がとても素敵な子だったので、「わ~! 笑ってくれるの~!」と私もいつの間にか小慣れたような調子で(これ、やっぱり自分でも本当にびっくりだ)言うと、お母さんの表情がぱぁ~っ! と明るくなったのが分かった。
「本当に、いい笑顔で笑うんですね~!」と言うと、さっきまで口下手だったお母さんが「そうなんです、最近ほんとによく笑うようになって~」と笑顔で返してくれた。
そして息子のことも「すごく歩くの上手なんですね、うちはまだ立てないんですよ~」なんて会話を進めてくれ、気づいたら互いの子を見つめながら色々話し合っていた。
最後は「また一緒に遊びましょうね~!」と言って別れたが、児童館を出る時には妙な達成感。
4時間にも及ぶ全力ハイハイ&あんよを終えた息子ときっと同じぐらい充実感に満ちていた。
そうか皆、自分の子どもを見てくれたら嬉しい。そして良いところを褒めてくれたりしたらさらに嬉しい。
非常にシンプルなことだが、少なくとも私は自分の外見や中身を注目&褒められるよりも数十倍嬉しい。
そういえば数週間前、息子を連れて遠方の国立公園に遊びに行った帰り、電車内で同じ月齢ぐらいの男の子を連れた家族に出くわした。
人懐こい息子と、すごくよく笑うその男の子が意気投合。お互いベビーカーに乗ったまま手を伸ばして繋ぎあったり、息子の拍手をその子が真似してケラケラ笑ったり……気づいたら私たち大人もデレデレ笑顔。
完全に初対面だと言うのにお互い、子供たちがじゃれ合う写メや動画を撮りまくった。
「ニコニコ笑ってくれるの~!」「拍手教えてくれたの~ありがとう~!」
物凄く盛り上がった。相手の家族が途中下車した時の名残惜しさと言ったら。寂しそうに男の子を見つめる息子の顔を未だに忘れられない。
あの時の気持ちを思い出しても、きっと自分の分身であるかのような我が子を「よその子」と分別するのではなく「注目」「共有」してくれるだけで、そのお母さんに対して妙な仲間意識ができてしまうのだろう。そして子供同士が仲良くなるとか密度が濃くなればなるほど。
女は常に「同人種」としかつるめない生き物だと思ってきた。だがもし子供をキッカケに、その黄金ルールを取っ払って様々な人と向き合えるとしたら、「ママ友」という風習も悪くないかもしれない。
次に児童館で今日話したお母さんたちに会ったら絶対声をかけよう。
お互いの子の成長を見守り合えたら楽しいだろうな、子供同士がお友達になれば良いな、
久しぶりに、希望しか存在しないような心境で家路に着いた。
初めての児童館はとても素敵な場所だった。