
宮西達也『おかあさんだいすきだよ』金の星社
毎晩、子供が寝るときに、絵本を読む。実家から毎月2冊ずつ贈られてくる母(子にとっては祖母)セレクトの絵本と、保育園から借りてくる絵本と、自分で興味を持って買ってみたものなどなど。まだ2歳なので、単純な言葉と大きくわかりやすいイラストの短い絵本が多い。
先日、朝日新聞web版で『絵本の世界「ワーママ」いない? 多彩な家族、描けぬ壁』という記事を読んだ。確かに、絵本では「エプロンをつけて家事をするママ」と「ネクタイをしめて背広を着て仕事に行くパパ」の組み合わせをよく目にする。人間の家族じゃなくて、擬人化したクマでも、ネコでも。そういう世界観を無視した絵本ももちろん、とてもたくさんあるのだけれど。
絵本は何十年も増刷を繰り返すベストセラーも多い印象がある。今、手元にある『しろくまちゃんのほっとけーき』も、1972年に初版発行で2017年に第212刷発行。長く読まれ続けているのだ。エプロンママ、背広パパが多数派だった時代に書かれた作品が今の親子にも読まれている、ということは関係しているだろう。
新刊でヒットするものもたまにある。最近だと、のぶみ作『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)が大ヒット。“発想絵本”として評価の高いヨシタケシンスケさんの作品も売れている。
そういうロングセラーやヒット作は、多くの子供たち、そして保護者に受け入れられているのだろうが、しばしば、「ウッ……」と胸が苦しくなるタイプの作品に出会ってしまう。親子愛、母性、などが描かれたものに多い。帯に「涙が止まりませんでした」(×歳児のママ)と書いてあったりもする。恐竜や動物の友情を描いたシリーズ、そして『おとうさんはウルトラマン』シリーズなどで人気の絵本作家である宮西達也さんの『おかあさんだいすきだよ』(金の星社)は私にとって完全にその類であった。
この絵本はそもそも子供向けではなく、「母親向け(プラス、父親向け)絵本」「子育て応援絵本」として作られた作品だ(出版社HPや絵本ナビにもそのように記載されているし、著者インタビューでもそのように話している)。作品の帯にも『ママへの贈りもの 子どもを抱きしめたくなる絵本』とある。
「母親向け」であることを前提に、最初から最後まで読んでみて、ああこれは、真面目な母親であればあるほど、追い詰められてしまうだろうなという感想を持った。
「ぼくね おかあさんだいすき。おかあさんは『はやくおきなさい!またねぼうでしょ』っていうけれど… やさしく『おはよう』っていいながら ぎゅうって だっこしてくれたら ぼくね もっと おかあさんのこと だいすきだよ。」
こういった調子で、子供(幼稚園に通う男児と見られる)が朝起きてから寝るまでの間の行動ひとつひとつで母親から叱り飛ばされることについて、「おかあさんは××っていうけれど ○○してくれたら(いってくれたら) ぼくね もっと おかあさんのこと だいすきだよ」というのがずーーっと続く。ラスト、寝入った息子を抱き上げて、母親は「だいすきなのに しかってばかりでごめんね こんなおかあさんのこと だいすきっていってくれてありがとう」と涙を流すのだった。
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