
エロゲを楽しむ女性はどう見られている? Photo by Alessandro Valli from Flickr
性被害からの回復が早かったこと、人前に出て発言していること、スカートや身体のラインを出す服が好きなこと……私自身のパーソナリティにおいて社会で思われている“性被害害者のドレスコード”にふさわしくないものは多くありますが、その最たるものは私が“男性向け二次元コンテンツのオタク”であり、アニメや漫画だけでなく「エロゲ(18禁美少女ゲーム・ビジュアルノベル)が好き」というところではないでしょうか。
私は、幼少期からアニメや漫画が大好きでした。子どものころには「SDガンダム」や父の大好きな「銀河英雄伝説」のアニメを見て育ち、小学生になると知人の影響でいわゆるギャルゲー(美少女ゲーム)やエロゲのコンシューマー版(レーティングをなくし、性表現や反社会的な表現をなくした家庭用ゲーム機への移植版)をプレイしていました。家には小説や図鑑など本もたくさんありましたが、「ジャンプ」「マガジン」「スピリッツ」など漫画雑誌から漫画の単行本、歴史や学習漫画までが文字どおりあふれていて、本棚に収まりきりませんでした。
男きょうだいの末っ子で近所に女の子も少なく、男の子とばかり遊んでいた私は、実際の女性に触れるよりも二次元の女性に触れる機会のほうが多かったのです。
死にたい日々から、救ってくれた
高校受験をきっかけに忙しくなり、漫画は読んでいたものの、アニメやゲームに触れる機会は一旦減りました。けれど、大学在学中に被害に遭って引きこもりになり、毎日寝込んで絶望しているときに、人からおすすめのエロゲを貸してもらう機会がありました。そして私はまたオタクに舞い戻りました。
動けない日々がつづき、失いそうな希望を必死に留めてもがいていた私の心を、アニメやエロゲや漫画は確かに救ってくれました。動けなくても寝ながらアニメを見て、小説を読むようにエロゲをプレイし、漫画を読み、それらに感動して、励まされ、生きる力をもらっていました。作品の世界に入ることで混乱した頭がすっと静かになっていく、そんな感覚がありました。
その後、徐々に回復し元気になって、一度は忙しく動き回れていたのですが、フラッシュバックが再発し再び体調を崩して寝込む日々が長く続きました。仕事をなくし、結婚で悩み、人に悩みを相談できず、自分をあきらめてしまいそうになり、追い詰められていました。
当時、私は卜沢彩子であることを隠して匿名で、好きな作品のファンのコミュニティにつながっていました。追い詰められてもう死のうと計画していたとき、思いとどまったのはそうしたコミュニティで出会った人々とのつながりのおかげでした。彼らの影響で他の趣味も広がり、地方に暮らす人など、普段出会うことのない人と接してさまざまな価値観に触れました。
その一方で、「性的コンテンツに親しむ女性が誤解されやすいこと」「被害に遭って性表現への接触自体を苦しく思う人も多くいること」「性表現やアダルトコンテンツに問題があると考える人が多いこと」から、性犯罪の被害者が「エロゲをやっている」と公表すれば所属しているNPOやほかの当事者に迷惑がかかるんじゃないか? と悩みました。