クール・ジャパンは「B級カルチャー」をプッシュせよ!〜アメリカを席巻する絵文字うんち&袋麺

文=堂本かおる
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 近年、「クール・ジャパン」とか「日本スゴイ! スゴイ!」系の番組とか、日本国内ではいろいろとかまびすしい模様。だがアメリカに暮らしていると、「スゴイ!」ジャパンにはあまり出会えない。

 しかし、ジャパンなモノはアメリカにも確かにある。いろいろある。なかでも最近、特に気になっているのが絵文字の “poop” (うんちの幼児語)だ。絵文字は今やアメリカ人にとっても無くてはならないモノとなり、”emoji” という言葉は英語化してしまった。さらに今、その名もズバリ『The Emoji Movie』という劇場長編アニメ映画が公開中だ。

絵文字うんち Poop

『The Emoji Movie』

『The Emoji Movie』

  クラスメートのアディに夢中な高校生のアレックスは、アディと emoji を含むテキストメッセージを交換して、なんとかデートにこぎつけようとしている。ところがアレックスのスマホの中には絵文字たちの住む都市があり、絵文字たちは今日も大騒ぎ……というコメディだ。いろいろな絵文字がキャラクターとして登場するが、その中のひとり(ひとつ?)が、リーゼント風の髪型と蝶ネクタイの “Poop” なのだ。

 この映画が作られる前から、絵文字のうんちはなぜかアメリカで大ブームとなっていた。当初はキーホルダー、ぬいぐるみ、Tシャツといった比較的あたりさわりの無いグッズが作られた。やがて昨年11月の大統領選が迫ってドナルド・トランプへの抗議デモが盛んになると、うんちの絵をトランプに見立てたプラカードや壁画が描かれるようになった。英語の “shit” (クソ)は言うまでもなく罵倒語だ。そして今、うんちは再びキュートになり、うんちのイラストが描かれたマグカップやお皿といった食器、製氷皿などのキッチン用品にまで及び、うんちの形をしたカップケーキすら作られている始末。

 emojiうんちの爆発的人気に驚く理由は、絵文字登場以前のアメリカでは、うんちは忌避すべき存在だったということだ。日本と違って、アメリカにはうんちを題材にした絵本などほとんどなかった。幼児のトイレ・トレーニングに際して親は「Poop出る?」などと声は掛けるが、それが限界。うんち柄の「よく出来ました」シールなどあり得なかった。古今東西のアホなイラストをTシャツにして着るティーンエイジャーですら、うんちだけには手を出さなかった。

  要は「うんちは汚な過ぎるモノ」「ネタにすべきではないモノ」というアメリカの風土と常識を、日本のemoji うんちが打ち壊してしまったのだ。つまり、意外なところで保守的だったアメリカを解放したのである。

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