秋元康とつんく♂の歌詞世界におけるアイドルの「主体性」と「賞味期限」

【この記事のキーワード】

少女の「賞味期限」と「結婚」

 アイドルを商品として扱う秋元康のプロデュース作品において、キーワードとなるのが「賞味期限」という言葉だ。

 AKB48 Team 8 WESTの『思春期のアドレナリン』という楽曲は、恋がしたくてたまらない少女の衝動を歌った曲であり、そのテーマ自体に異論はない。しかし、〈急げ 力を試すんだ/急げ 切れるぞ 賞味期限/何かをやらなきゃもったいない/正義のために行け!/今だ 進め未成年!〉と、まるで年齢を重ねることで女としての賞味期限が切れてしまうかのような表現が登場する。

 NMB48 Team Mの『恋を急げ』という曲でも、〈急いで恋をしなくちゃ/一人に慣れてしまうよ/女の子の賞味期限/あっという間に過ぎちゃう〉と、女性には恋をするための賞味期限があるという。

 さらに、AKB48からの派生ユニットノースリーブスの『Girls’ talk』という曲では、〈ポニーテールが似合うまで/女の子でいたいから/賞味期限いっぱいまで/可愛くいたいの〉と、ここでもまた、女性には賞味期限があるという歌詞を書いている。

 そして、2002年におニャン子クラブが再結成した際にリリースした唯一のシングルが『ショーミキゲン』という曲。〈女も若けりゃそれだけで/チヤホヤされた/お刺身のままで/二十歳過ぎたら/魔法が解けて/焼いたり煮たり……〉と、女性の賞味期限は20歳だと主張する衝撃の内容だ。

 年齢を重ねると賞味期限切れとなり、女性としての価値が下がる。何度も繰り返し、そうした歌詞を作り続けていく秋元康。アイドルたちの“商品価値”を年齢で値踏みしながら、「“僕”“君”ソング」を作っていることには、ぞっとしない。

 時代は少し遡るが、1987年のおニャン子クラブ解散時にリリースされたラストシングルは『ウェディングドレス』という曲で、アイドルをやめたら結婚するのが女性のゴールとでも言わんばかりだった。秋元康の女性観は当時から一貫している。

 ちなみに、2014年に活動停止となったBerryz工房の最後の曲としてつんく♂が作ったのは、『Love together!』(アルバム『完熟Berryz工房 The Final Completion Box』収録)という楽曲だった。〈忘れないわ 今日までの/素敵なこの道を/好きよ 好き 大好き/また会えるね〉と、これまでの活動を振り返るとともに、〈時が過ぎ それぞれの/道に向かって行く/だからこそ この瞬間/宝物だよ〉と、アイドルを卒業してそれぞれ道に進んでいくメンバーたちの未来を見守るような歌詞だ。もちろん大人になったBerryz工房メンバーが賞味期限切れであるかのような雰囲気は微塵も感じられない。結婚という“ゴール”の提示もしていない。つんく♂は、アイドルたちを賞味期限のある商品としては見ていないのだ。

 あくまでも、表現者としてのアイドルのために作られているつんく♂の歌詞には「僕」という一人称がほとんど登場しないが、例外もある。モーニング娘。の『君さえ居れば何も要らない』は、つんく♂によるハロプロ楽曲としては珍しく、一人称が「僕」だ。

 〈僕たちは自由だろ/なのに窮屈さ/「あれはダメ」「それはまだ」/悔しくなるよ〉というフレーズから始まるこの曲。つんく♂は自作の楽曲がリリースされるたびにブログなどでライナーノーツとして説明文を発表しているが、『君さえ居れば何も要らない』については「確かに恋愛ソングです。でも、この曲は人類愛の普遍を歌った唄です」と説明している。単純に“ファン=僕”として置き換えられるような恋愛ソングでないことはいうまでもない。地球規模のメッセージソングというべき内容だ。

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