正しい男性のあり方、とは?「牛乳石鹼」炎上動画が問いかける男性性の揺らぎ

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 7月にマイナビニュースが掲載したこの記事『共働きパパたちの覆面座談会 – 妻の言うことは”ごもっとも”なんだけど……』に、興味深い意見があった。この座談会に登場するのは、共働きで家事育児をしているパパ4人。だが、たとえば負担感の違いをめぐって妻と衝突したり、家事スキルや考えが合わないことに悩んだり、会社の理解がなかったり等、それぞれに悩みは尽きないという。

 それぞれが経験を語り合う中で、進行役として参加した男性学研究者の田中俊之さんは「正論は、必ずしも家族を幸せにしないのかもしれません」と発言。もっともな主張であっても、すべて受け入れて完璧にやろうとするのは、夫婦互いにしんどいということだ。大前提として、この座談会に参加した男性陣はいずれも、子供への「愛情」が大きいゆえ、誰かから評価されるわけでもない育児へのモチベーションを高く保っている、という。愛情があって、家事育児に取り組む父親でも、家庭生活が万事円満でスッキリ快調というわけではないのがリアルだ。個人的には、愛情やらモチベーションの高さにかかわらず、意図して子供を誕生させたからには、親の責任としてやるべきことだと思うが。

自分の父親は「正し」かったのか?

 今は、いや本当は昔から、色々な家庭のあり方があり、家族がある。男性に対して「家事育児をしたくないのなら子作りするな!」と思う女性もいるだろうし、逆に「家事育児なんていいから稼いでほしい、妻子を養えないのに結婚するなんて無責任!」と考える女性もいるだろう。そして女性に対して「家事育児を完璧にして、自分を癒してほしい」と望む男性もいれば、「二馬力で稼いで家計を支えてほしい」という男性もいる。だから万人に「コレだ!」と提示していい正解などはない。

 今回のムービーで、主人公は自分の父親/男としての在り方を「正しいのか?」と自問しているのだが、判断するのは“彼”自身だ。また、絶対的正しさなんて存在しないし、どんな父親だって、子供に対して「子供にとって正しいもの」「子供のためになるもの」ばかりを与え続けていくことはできないだろう。それに、「父親」「母親」をどのように評価するかは、子供次第である。自分は「正しい」と思っていても、子供からすれば「正しくない」ことだってあるだろう。

 世の中には、「家族思いの優しいパパ」は男性的でないとか、男としてはイケてないとか残念だとの感覚を持つ人もいらっしゃるようだが、(男は生きづらくなっている? 美保純、江原啓之「今までかっこよかったのにパパになった途端……」)そもそもの問題の根っこが、男性に多様性を認めていないところにあるような気がしてならない。だから、今回の「牛乳石鹼」ムービーが男性の揺らぎを映像化したこと自体は、意義がないとは思わない。

 とはいえ、ムービーの主人公の行動がヒンシュクものであることには同意するし、“彼”の人物像に共感は覚えない。子供の誕生日で早く帰る約束をしているのにも関わらず、勝手に約束を破り、連絡もなしに(着信も無視して)飲んで帰るのだから。男は口下手で不器用だけど、内心はいろいろ考えてるんだよ……という人物造形は、やっぱり旧来的で手垢のついた男性像でもある。その点は残念だ。

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