出川哲朗が「最も辛かった」と振り返る20年前の「ゲイ差別ロケ」
カルチャー 2017.08.20 13:00
『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)
随分前から「(自主規制のせいで)テレビはつまらなくなった」という意見を耳にする。そういうとき大概「いま振り返ってみるとあの企画はありえないよね」と過去の破天荒な番組を懐かしむ声がセットになる。8月15日放送の『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)でも、そんないま考えるとありえないロケを出川哲朗が振り返る一幕があった。
トレンディエンジェルが「出川哲朗伝説」として、出川が「最も辛かった」という、あるロケの話題をイラストの描かれたテロップとともに持ち出すと、出演者のヒロミがすかさず「最高だよコレ」と反応する。それほどこの話は定番の「ネタ」になっているようだ。
このロケは、世界中のゲイバーでコンドームを配布しエイズ撲滅を呼びかけるという「ストップエイズキャンペーン」と題された不定期企画で、シドニーのゲイバーに行ったものだ。90年代人気番組として席巻していた『進め!電波少年』(日本テレビ系)の特別番組『電波少年INTERNATIONAL』のワンコーナーとして1995年12月31日に放送されている。
「1階で相手を見つけて、気にいった相手と2階で『イチャイチャ』する仕組み」になっているゲイバーの1階で、「冗談だけど、『ユーアータイプ』『アイウォンチュー』」と言いながらコンドームを配っているうちに、2階に連れて行かれ、「6、7人のマッチョの人に全裸にされる」のが「いつも通り」だと出川は言う。カメラマンは同行せず、ピンマイクをつけた出川が単身でゲイバーに入店しているが、「助けて」といえばスタッフが来る手はずになっていた。しかしシドニーのロケでは、出川いわく「絶対わざと、そのほうが面白いから」スタッフが助けに来なかったそうだ。
「そのまま俺は……」「めちゃめちゃ痛かった」「ビリヤード台に(仰向けに寝転がり、足を広げるジェスチャーをしながら)こういう感じに」と、直接的な表現はしないものの、肛門に男性器を挿入されたことを匂わせる話を、身振り手振りをいれて説明したのち、「オーストラリアのビリヤード台の天井の景色いまだに忘れられない」といって話を締める。その間、番組に出演している多くのお笑い芸人は、手を叩き爆笑していた。
この企画は、「いま振り返るとありえない」と懐かしむような話ではない。当時は現在ほどには、ゲイに対する理解が広まっていなかっただろう。いまだ「ゲイ」そして「ホモ」や「オカマ」という言葉を差別的な文脈の中で使い、「掘られる」などという話をジョークとして使うような現状の中で、どれだけの人がこの放送に傷つけられただろうか。90年代半ばといえば、80年代後半から起きたエイズパニックの記憶もまだ鮮明に残っている時期だ。声を上げることもためらわれただろう。これは振り返るまでもなく、当時から「ありえない」話だったはずだ。