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苦痛は取り除いていい、手作りじゃなくていい。「愛情で乗り切れ」は暴論<育児する男>樋口毅宏×劔樹人【2】

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子供の医療と食事

(なんだかんだ言いながら奥様のことが大好きだとビンビン伝わる樋口さん)

(なんだかんだ言いながら奥様のことが大好きだとビンビン伝わる樋口さん)

――予防接種や健診は、ご夫婦で行かれてるんですか?

樋口 うちは完全に僕担当ですね。住んでる地域のその時期に生まれた子の健診や予防接種は、男親のみで連れてってる人は僕だけでした。

 最近、区でやってる6カ月健診に行きましたけど、男は僕ひとりでした。

樋口 ちょっと意外な感じしません? 会社員とかだと休めなくて仕方がないのかな。

――でも女性の会社員が産休育休を経ての職場復帰後に、子供が熱を出したり予防接種だったりで仕事を休んだり半休とったりするのは、普通にあることですよね。

樋口 ああ、そうですよね……。男も休んでいいのに。でもいまだに男のほうが育休を取りにくいか。

 そうかあ。

樋口 僕らだけじゃないと思うんですけどね、自営業のお父さんって。赤ん坊の健診なりなんなり、やりたいお父さんはいるはずですよ。保育園の送り迎えでは、わりとお父さんも見かけますけどね。スーツ着てママチャリとか。

 うちも平日の昼間でも子供を連れてるお父さんは近所で見かけますし、区の健診や予防接種でも、いていいですよね。

――そもそもお二人は、ごく自然に育児担当に?

樋口 妻は事務所でクライアントと会ったり、テレビ局に行って番組に出たりしているので、家で仕事をしている僕のほうが子供と一緒にいることになるだろうと、最初からわかっていました。独身のときより仕事量をこなせなくなることも覚悟していたし、70できたら御の字、0の日もあるだろうとあきらめていました。とはいえ何もできなかった日は妻に当たっていると思います。この場を借りてお詫びします。ごめんなさい。

まだ保育園に預けられなかった頃、僕が今日のように、仕事で東京に出る日なんかは、妻が事務所に赤ん坊を連れて行ったこともあります。「これじゃ仕事なんかできないってわかった」と言っていました。でもお互い近くに住んで手伝ってくれる親族もいないんだし、やるしかないんですよ。それにね、この年まで自分の好きなように寝て起きて遊んで、深夜に「さあ~今からバリバリ仕事するぞ」って時間の使い方もできたけど、この先は当分できない。それは仕方ないことだからあきらめて、今までとは違う生活をしていこうと決めたんです。

――お子さんが欲しいな、子供を育てたいな、という気持ちはずっとあったんですか?

樋口 妻と出会うまではまったく、思ったこともなかった。自分がこんなふうに家事育児をやる男になることも。大きく影響を受けたのは、田房永子さんの『ママだって人間』(河出書房新社)を読んだことでしたね。ものすごく面白くて、同時にショックを受けました。『おっぱいがほしい!』にも書きましたが、子育てをまったくやらない男になってはいけないと、心底思ったんですよ。妻も僕の影響を受けて、50冊以上買って配っています。

 うちは僕が特別子育て担当という感じではなく、二人で分担すると決めてやっていて。仕事も、お互いやりたい仕事はやるようにしています。ただ、今は僕より妻のほうが仕事は忙しいっていう。僕はもともとの仕事柄、身の回りにミュージシャンの男性が多いですが、意外とみなさん子育てしてるんだなって印象を受けてました。ただ、さすがに僕ほど子育てしてる人は少ないような気はするんですけど。

樋口 結局、育児はある程度、自分の時間を制限されることになります。だからって「おまえは母親だから」って、女性に当然ように強要するものじゃない。

 またハロプロの話になってしまいますが、つんく♂さんっていらっしゃるじゃないですか。ご病気もあって今はハロプロの完全プロデュースはされておらず、カムバックを願うファンの声も大きいのですが、でも、つんく♂さんは非常にご家族と一緒に過ごす時間を大事にされていて、それもあって今は一線を退いているんじゃないかなと思うんです。その選択に、とやかく言えないなって。つんく♂さんは僕にとってひとつの指標というか、背中で教えてくれているような気がしますね。

樋口 それはあるかもしれませんね。

 そういう男の生き方もありなんだって。

樋口 僕は結婚と同時に、妻の弁護士事務所が京都なので、初めて東京以外に引っ越して、一緒に生活しています。知り合いがいない場所で初めての子育てなので、同じように夫の転勤で知らない土地へ行って子育てするお母さんは大変だろうなと思います。

いつもそうなんですが、妻が命令・指揮系統で、僕は足軽として動く。そういう夫婦なんです。

 うちも完全にそうです! 体はいくらでも使うんで、指揮をとってもらえるとありがたいですね。夕飯とかもね、「今日あれが食べたい」と言ってもらったほうが本当にラクですよね。

樋口 そうそう、劔さんが偉いなあ~と思うのは料理ですよ。タッカンマリやトマトのカッペリーニを作ったり。僕は炒め物ぐらいしかできない。妻は料理が上手で「やるよ」と言ってくれるのですが、仕事で疲れて帰ってきた後に台所に立たせるのは忍びなくて。

 じゃあいつも食事はどうされてるんですか?

樋口 僕ら夫婦は外食が好きなので、外で食べることが多いんです。京都は美味しいお店が密集しているので、これがまた楽しくて。

 でも僕も、要領が悪いこともあって、子供が生まれてから料理の回数がぐっと減りました。UberEATSというデリバリーのサービスを利用して出前をとることが多くなったんですよ。うちは妻が疲れて外の仕事から帰ってきたら、「じゃあ僕はご飯作るから君は子供見てて」じゃなくて、デリバリーをとるのでそれを待つ間みんなでゆっくりしよう、と妻が言ってくれるような感じなんです。

樋口 無理しすぎないほうがいいですよね。僕は息子の離乳食も、「作らなくていいよ、今はちゃんとしたベビーフードがいっぱいあるんだから」と妻が言ってくれたので、そうしました。ネットとかではね、「お母さんが手間隙かけて愛情こめた手料理をあげないと子供がおかしくなる」なんて脅しがありますけど、そんなのは全部まやかし。今は19カ月なんで大人と同じものを食べてますけど、離乳食の時期は全部ベビーフードで乗り切りました。

 僕も手足口病で大変だったところからベビーフードを使ってみているのですが、あれはいいですね。作る時の参考にもなるし。

――手作りにこだわったり、手間隙かけるのがイコール愛情だという思い込みはとても根強いですが、それぞれの判断でいいんですよね。

樋口 これからも劔さんどうぞよろしくお願いします。

 こちらこそ、これからよろしくお願いします!

(いかに我が子が異常に可愛いか滔々と語り合うお二人)

(いかに我が子が異常に可愛いか滔々と語り合うお二人)

 

■樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ヶ谷』でデビュー。2013年に出版したベストセラー『タモリ論』をきっかけにタレント弁護士の三輪記子さんと知り合い、2015年に結婚。同年11月に長男・一文君が誕生した。

■劔樹人(つるぎ・みきと)
1979年、新潟県出身。大阪での大学時代からベーシストとして音楽活動を開始。2008年よりダブ・エレクトロユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ」に参加。2009年、「神聖かまってちゃん」のマネージャーとしての活動を開始。杉作J太郎率いる「男の墓場プロダクション」所属。2014年、エッセイストの犬山紙子と結婚。
ブログ 劔樹人の「男のうさちゃんピース」

 

構成/wezzy編集部
撮影/天田輔

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