我ら、頼りになる、強い嫁に仕えて <育児する男>樋口毅宏×劔樹人【1】

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出産で妻の体は大ダメージを受けたから

――劔さんの『今日も妻のくつ下は~』で裏表紙にも使われている、泥酔した犬山紙子さんが靴下をタンスの上に脱ぎ捨てていて、それを劔さんが拾い集めて洗濯するというエピソードがありますよね。一般的に、こういうことを頻繁にされると、パートナーへの怒りゲージがたまってしまうものだと思うのですが、劔さんは怒りゲージにポイントが蓄積されることはないのでしょうか?

 う~ん、特には……。

樋口 うちも鼻をかんだティッシュとか空になったペットボトルとか、テーブルに置き去りのままなので、捨てる係は僕です。脱ぎっぱなしの靴下、パンツ、ブラジャーなどを拾い集めて洗濯機に入れるのも僕の役目です。

 鼻かんだティッシュは床に落ちてますよね。僕もよく拾って捨ててます。

――お二人とも、奥様が大のお酒好きですよね。

樋口 それが、もとは酒豪でいくらでも飲めた人なのに、産後は体質が変わって酒に弱くなってしまって。この間も、ビールを1缶飲んだだけで全身がありえないぐらい真っ赤っかになって、「心臓が痛い」とうんうん唸りだした。「救急車を呼ぼう!」って言っても拒否して。1時間以上ガマンしていた。こちらも生きた気がしなかった。だから最近は飲まないですね。妻の体は出産ですごく変化しました。口癖が「つらい、しんどい」になりましたから。

――もとは「つらい、しんどい」なんて口癖はなかった?

樋口 ものすごくタフな人だったんです。まったく寝ないで仕事ができた。妊娠前のことですが、テレビ番組のロケで、豪雨の中、小豆島の急峻な山をチェーンでよじ登る姿に、スタッフが「強豪校の甲子園球児のようだ」と感嘆の声をあげていました。大学時代は陸上部でしたしね。
それが出産以降、免疫力が低下して風邪を引きやすくなったり、この間も子供の保育園で手足口病が流行っていて、赤ん坊から移された妻が39度の熱を出しました。それなのに休めず、本業で遠方まで行かなきゃいけなくて可哀想でした。

 つらいですよね……うち、この前の週末がそれだったんですよ。子供がまず先週、急に熱を出して発疹も出て、手足口病だと。僕はうつらなかったんですが、妻だけ感染して40度出ました。

樋口 やっぱり。周りの話を聞いても、夫は大丈夫なのに妻だけ罹るケースが本当に多いです。出産がどれだけ女性の肉体に影響を及ぼすか、ということですよね。産後の体調の回復には相当な時間がかかるんだなと思います。労わらないといけません。

 個人差はあると思いますが、本当にそうですよね。

樋口 妻は高齢出産ですし、「出産してから体力が衰えた」と言ってます。性欲がなくなったことも、ものすごくショックだそうで。

 なくなっちゃったんですか。

樋口 とんでもない性豪女だったのが、パタッとなくなった。よそでヤッてるんだろうと思うんですが。びっくりですよ、本にも書きましたが年間300日以上、妊娠中も毎日求めてくるぐらい、ケタ外れの性欲の持ち主だったのに。

 そうすると、セックスレスという……。

樋口 ガクッと減りましたし、ここ2カ月くらいはしてないです。僕から誘うんですけど、もうね、妻は疲れすぎちゃってそれどころじゃない。あと、横に息子が寝ているのにしたくない、とも言いますね。

――そのことに対して、樋口さんが不満に思ったりはありますか。

樋口 うーん、こればっかりはしょうがないですよねえ。体の変化ですからねえ。産むのは女性にしか出来なくて、僕は代われませんから。産んでくれたのは妻ですからね。

 そうですよね。出産の肉体へのダメージって、交通事故で大怪我をしたのに匹敵すると言うじゃないですか。産後はもう、妻が満身創痍の状態になっているんだという認識で、僕は接するようにしていました。まあ妊娠中から「決して妻の地雷を踏まない」ことに気をつける、って挑戦してましたけどね……

樋口 ……(絶句/やっぱり怖いんじゃん、という表情)

 あ、ほんと、うちの妻はそんなに怖くないんですよ! 怖くないです!

樋口 普段はおとなしい女性でも、妊娠中は別人格になります。

 そうなんですよ、どうしてもホルモンの関係で通常時より感情の起伏が激しくなってしまうときもあるんですよね。それは彼女もわかっていたので、妊娠が発覚した段階で、「こういうときは、こうして」という情報を共有して、僕も彼女を怒らせないように色々気をつけてました。

樋口 いやでもね、劔さん偉いなあ~と思うのは、劔さんにも仕事があるし、自分だけの時間も欲しいし、だけど子供の面倒を見る時間が長かったりすると、どうしても押し付けられているような気持ちになってしまうのは、男女に関係なくあると思うんですよ。妻に言ったことがあります。「このままじゃ俺は自分の仕事をできない」と。キレられましたけどね。劔さんはそういう気持ちになってしまうことって、ありませんか?

 僕は全然言えないんですよ。「締め切りが今日だからやらなきゃいけないんだけど」と思ってもなかなか「今から仕事をするから子供見てて」って言えなくて。言えないのに焦ってるから言葉尻にトゲは出ちゃってるかもしれない。でも妻は僕が言えなくてもなんとなく察知するみたいで、気を遣ってくれています。

樋口 えっ、ということはですよ。犬山さんは、その語尾に出ているトゲトゲしたニュアンスを、見逃してくれるんですね?  トゲをわざわざ拾いに行って、焚きつけて炎上させたりはしないんですね?

 まあ、それはしない……(笑)

樋口 エライっ! いいなあ~~~~。わざわざそんなボール拾いに行かなくていいのに、こっちのボソッと言った一言を拾って針小棒大に拡大したりってことは、ないんですね!

 大変ですね、樋口さん(同情)。

 

後編に続く

 

■樋口毅宏(ひぐち・たけひろ)
1971年、東京都豊島区雑司が谷生まれ。出版社勤務の後、2009年『さらば雑司ヶ谷』でデビュー。2013年に出版したベストセラー『タモリ論』をきっかけにタレント弁護士の三輪記子さんと知り合い、2015年に結婚。同年11月に長男・一文君が誕生した。

■劔樹人(つるぎ・みきと)
1979年、新潟県出身。大阪での大学時代からベーシストとして音楽活動を開始。2008年よりダブ・エレクトロユニット「あらかじめ決められた恋人たちへ」に参加。2009年、「神聖かまってちゃん」のマネージャーとしての活動を開始。杉作J太郎率いる「男の墓場プロダクション」所属。2014年、エッセイストの犬山紙子と結婚。
ブログ 劔樹人の「男のうさちゃんピース」

 

構成/wezzy編集部
撮影/天田輔

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