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日本人はチップが苦手〜仕事の評価が「お金」にならないお国柄

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レストランでのチップ(NY市)その2

チップ提案額が印刷されていたので18%を選んで、その切り上げで20ドル

チップ提案額が印刷されていたので18%を選んで、その切り上げで20ドル

 外国からの観光客が多いレストランは、レシートにチップの参考額を印刷していることがある。チップの習慣がない国から来た客は相場を知らなかったり、最悪の場合はチップを払わずに店を出てしまうからである。

例)
飲食代:70.44ドル
消費税(8.875%):6.25ドル
合計:76.69ドル

チップ提案額:20% 15.34ドル
チップ提案額:18% 13.80ドル
チップ提案額:15% 11.50ドル

チップ:14.00ドル18% – 13.80ドルの切り上げ)
支払合計:90.69ドル

 チップ提案額18%(13.80ドル)を選び、やはり端数は面倒なので切り上げ、14ドルに。この例のように支払い合計が90ドルなど「キリのよい」金額に近くなる場合、日本人の中には稀にチップの額をプラスマイナスして「90ドルきっちり」にしようとする人がいる。アメリカ人は日本人のように「キリのよさ」にこだわらず、そもそもクレジットカードで支払うのであれば、キリをよくする意味もない。

 ただし現金で払う場合は90ドルちょうどを払い(それ以上の金額でもいいが)、「お釣りは要りません」”Keep the change.” と言えば、飲食代+税金を差し引いた残りをチップとして払うことになる。

 なお、やはり観光客の多いレストランでは合計金額にあらかじめチップを含めた勘定書を出すところがある。チップの取り逃がしを防ぐためとはいえ、チップの額は客が決めるものであり、これは不愉快である。いずれにせよ、チップがすでに含まれていることに気づかず、二重に支払わないよう気をつけよう。ちなみにチップ(tip)は “gratuity” と記されることもあるので要注意。

 チップもクレジットカードのレシートに金額を書き込んで一緒に払ってしまうことが多いが、実のところ、チップだけは現金で払うほうがウェイトスタッフは喜ぶ。クレジットカードで支払うとカード会社が手数料を引いてしまうからだ。

仕事に対する評価は、適正な額で

 懸命に貯金をしてやっと果たせた旅行。ニューヨークは他都市に比べてホテル代も飛び抜けて高く、少しでも節約したいのはやまやま。実はニューヨーク生活20年の筆者もしょせん日本人。いまだにチップをケチる傾向にあることは認めざるを得ない。しかし、チップはアメリカでは当たり前の習慣であり、飲食業界はチップを前提に回っている。したがってチップも「必須の支出」と考えるべきだろう。

 その「必須の支出」が払えない貧しいアメリカ人はチップが必要なレストランには出向かない。というより行けない。「外食」する場合はファストフードの店を選ぶ。また、チップを払えるアメリカ人の中にもチップの不便や非合理性を訴える人はいる。観光客に人気のレストランの中には「チップ廃止」を敢行したところもある。しかし、まだ圧倒的多数のレストランでチップは必要なのだ。

 チップは15%にしてもなんら問題はない。しかし、日本人の多くが最小率の15%を選ぶのは、「よい仕事をしてもらえたらチップをはずむ」という概念がないからだ。

 以前、筆者が同行していた日本からの観光客の男性がある店で梱包なしで買った商品を、日本まで持ち帰るためにどうしても梱包する必要があり、筆者がよく行く別の店に一緒に立ち寄り、梱包を頼んだ。

 店員はその店で買ったわけでもない商品に梱包資材を使い、手間のかかる梱包をしてくれた。そのため筆者が男性に「チップをいくらか払ってもらえますか」と頼んだところ、「え? えっと、……じゃあ1ドル??? でいいですか?」と答えられ、困ってしまった。こちらの生活実感では1ドル=100円くらいの感覚だ。あれほど手間をかけてくれたのに「100円」とは。

 もっとも、これは筆者のミスでもある。チップの習慣のない相手に金額の提示をせずにただ払ってくださいと頼んだので、男性こそ見当がつかずに困ってしまったのだ。

 それでも「100円かぁ……」と、密かにため息が出た。

 この件、日本では仕事の質や量に対する評価が適正な金額ではなされないことの証のように思えたのだ。「良い仕事をしてもらえました」「ありがとうございました」とお礼を言ってもらえることはあるが、有り体に言えば、言葉ではお腹は膨れないのである。

 レストランではウェイターやウェイトレスが注文の品を運んできたり、コーヒーのお代わりを注いでくれたり、勘定書を持ってきてくれたりするたびに何度も「サンキュー」は言うわけだが、彼らの仕事振りを見て、「日本式15%」に固執せず、適正な額のチップを払おうと心に決めたのであった。それが彼らの仕事への「敬意」の払い方なのである。
(堂本かおる)

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