超人気絵本作家・のぶみ『このママにきーめた!』が押し付ける母子の逃げられない結びつき

文=中崎亜衣
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子供は母親を選んで産まれてくると信じることで、逃げられなくなる人もいる

 のぶみ氏は6月に出版されているムック本『「ありがとう」は奇跡の言葉』(マキノ出版)にも寄稿しているのだが、「ありがとう」という言葉が大好きなのかもしれない。

 子供の誕生を、多くの親は喜ぶだろう。私もそうだった。が、それは親が、自分のエゴで勝手に喜んでいるだけだ。誕生する子供自身には、親を喜ばせる義務や責任など一切ない。子供が成長していく過程で、親は折に触れて喜ぶかもしれないが、その時も、子供が親を喜ばせる必要なんてない。子供は、親を喜ばせなくていいし、産んでくれたことに対して「ありがとう」と感謝の気持ちを持たなくてもよいと私は思っている。

 子供が親を喜ばせることや、親に感謝することそのものを否定する気はないし、したい子はすればいいのだ。が、親を喜ばせるとか感謝するといった行為を、親である側が賛美し、“幸せ”の符号を付けるのには、賛同できかねる。

 「子供は母親を選んで産まれる」という思想はわりとポピュラーなものになりつつある印象だが、私がこれを肯定出来ないのは、母親との関係が良好ではない子供、母親からの虐待を受けている子供も、そんな母親を選んで産まれたと解釈されるおそれがあるからだ。ひいては母親の虐待によって死に至った子供も、そんな母親を選んで産まれてきたということになる。

 親子は血縁関係がすべてではない。残念なことではあるが、すべての母親が子供を慈しみ育てられるわけではないことは、昔から繰り返される様々な家庭での事件報道からわかることではないか。

 また、子供を持つことを望みながらも子供に恵まれなかった女性が、私は選ばれなかったと劣等感を抱くかもしれない。いわゆる“自己責任”と紙一重な概念である、というのは言い過ぎだろうか

 のぶみ氏はあとがきで、「世界をよくするのは、ママがどれだけよろこぶかにかかってるんですよ」と、母親に責任を丸投げしている。この絵本には父親も登場しているのだが、父親と子供の関係性、父親と母親の関係性に関する記述は一切ない。

 このように、何重にも問題点を抱えているはずの同作。絵本というのは、複数人の大人を介して作られるものだと想像するが、2017年現在、関わった大人は誰も違和感を抱かなかったのかと思うと、背筋が寒くなる。

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