言うまでもなく、一連のやりとりには非常に問題がある。いちいち指摘するのも馬鹿らしくなってくるが、こういった企画に対してしっかりと批判しなければ現状はなかなか変わらないだろう。
まず亀梨の性自認やセクシュアリティがなんであれ、2015年に起きた一橋大学のアウティング事件、あるいは2016年に週刊誌『FRIDAY』(講談社)が報じた俳優(当時)の成宮寛貴に関する一件を振り返るまでもなく、他人が「オネエ」であると“タレコミ”をすることは、アウティングになりうるという問題がひとつ。また、「オネエであるかどうか」という一連のやり取りの中には、「オネエであること」がからかいの対象になるという出演者・番組制作側の認識がみてとれる。
有田の「IVANはちゃんとカミングアウトしたじゃんか」という発言は、まるで「カミングアウト」することが望ましい行為であるかのようだ。シスヘテロ男性が男性であることを、シスヘテロ女性が女性であることをカミングアウトすることなど、めったにない。誰がどんな性自認やセクシュアリティを持っていようと、カミングアウトしなければいけないということなどないはずなのに、なぜ「オネエ」であることをカミングアウトしなければいけないのだろうか。
亀梨の「だから(自分が着ているTシャツが)ピンクなんですね」も、「女性はピンクが好き」「オネエは女性的な色とされるピンクをきるもの」という規範にのっとった発言で不用意すぎる。いまだに「女の子は当たり前にピンクが好き」という価値観が強いが、女性やオネエがピンクを好もうが嫌おうが、当人の勝手だ。他人にとやかく言われる問題じゃない。その価値観を強化するような発言は望ましくない。
また気持ち悪さを覚えたのが、スタジオ内の空気だった。
前述の通り、出演者はゲストを含めて石原以外すべて男性だ。トークはまさに男の内輪ノリで行われ、「オネエ」でじゃれつく様子には、性的マイノリティへのフォビアを感じる。一口にオネエといっても、トランスジェンダーやゲイ、“女性らしい”異性愛男性などがいるため、これらはホモフォビアであり、トランスフォビアでもあると言えるだろう。まさしく、ホモソーシャルの典型的な例だと言える。
さらに堀内が石原にお酌を促すシーンにも嫌悪感を覚えた読者は多いだろう。実はさらに酷いやりとりが、コーナーの冒頭でレギュラー出演者によって行われている。
有田「(ゲストに)女性来る? 酷くない? (出演者が)おっさんばっかり」
上田「(スタッフに向かって)女性ゲストいなかったらコンパニオン呼んで」
(ゲストに石原がいることを確認すると)
上田「石原さんが来たので、コンパニオン大丈夫でーす!」
石原はゲストではなく、レギュラー出演者にとっては、おっさんの集まりに呼ばれたコンパニオンとして扱われているということだ。「深夜帯だし、ハメを外していい」とでも思ったのかもしれないが、深夜であろうが無かろうが問題であることは変わらないし、そもそも深夜でなくともテレビではこうしたやりとりをたびたび見かける。
なお、一連のやりとりが行われているのはたったの3分程度のこと。3分でこれだけ多く問題のある言動を繰り広げられるとは……と呆れそうにもなるが、いまだ20年前のゲイ差別、男性の性被害を冗談として取り上げ、ぜん息によって行動が制限される人を慮らずに「病気を言い訳せず」とツイートを行うのが日本テレビなのだと考えれば、納得行く話でもある。
だからといって黙っているわけにもいかない。取り上げるのも馬鹿馬鹿しいと思われるようなものも、ひとつひとつ指摘しなければ、いままさに苦しめられている人たちの状況は改善しないだろう。問題は問題であると指摘し、社会に共有されていく流れを加速させる必要がある。
(wezzy編集部)
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